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学校・教育機関向け WEBマガジン「#Think Trunk」 大学の国際化に必要なものとは?日本の現状と課題、国や企業の取組を紹介

2025.02.03
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グローバル人材の重要性が増している昨今、大学国際化を進めるには、現状・課題と向き合い、経験やノウハウを基に効果的な施策を打つことが大切です。本記事では、日本における大学の国際化の現状と課題、国や企業の取組について紹介します。

大学の国際化とは

大学の国際化とは、国内外から優秀な人材を受け入れ、教育を推進し、大学教育のグローバル展開を促進することです。海外の大学との交流や提携、外国人留学生の受け入れ、グローバル対応の多様な教育プログラム導入などを通じて、大学生・大学機能・大学教員のレベルアップを図ります。

ニューノーマル時代、IT技術の進化、多様化などの影響で、日本でもグローバル人材のニーズが更に高まってきました。大学の国際化によって国際競争力を強化し、「優秀な海外人材の定着」「日本のグローバル人材の海外展開」などの基盤を築きます。

日本における大学の国際化の現状と課題

日本における大学の国際化は、さまざまな課題が存在しているのが現状です。

これまで文部科学省主導で大学国際化に関するさまざまな施策を実施し、一定の成果を収めています。しかし、国際化の成果はアジア圏に偏っているのも事実です。

例えば、「大学の国際化と危機管理について~安全保障貿易管理に関する観点から~│文部科学省」によると、外国人留学生の約半数が中国の出身です。

今後、大学の国際化を加速するためには、アジア圏以外からの留学生・外国人教職者の受け入れ体制を充実させ、国内の大学の教育水準や多様性を高める必要があります。

出典:大学の国際化と危機管理について~安全保障貿易管理に関する観点から~│文部科学省

コロナ禍の影響を受け留学生が激減している

新型コロナウイルスの影響で、日本に赴く外国人留学生・受け入れ研究者数が激減しました。文部科学省の発表によると、2019年に31万2,214人だった外国人留学生の総数は、2022年には23万1,146人と約8万人減少しています。

また、受け入れ研究者数も2018年の3万9,398人から、2020~2021年には9,000人台と4分の1以下に落ち込みました。

2024年時点では、いずれも回復傾向が見られますが、新型コロナウイルス感染拡大前の水準にまで戻すには、今後も国際化関連の施策が必要とされます。

参考:大学の国際化と危機管理 について~安全保障貿易管理に関する観点から~(文部化科学省)

参考:「外国人留学生在籍状況調査」及び「日本人の海外留学者数」等について(文部科学省)

外国人教員はまだまだ不足している

大学の国際化を進めるには、各国の文化・言語に精通した外国人教員の登用が必要です。しかし、日本の大学全体の外国人教員比率は5.1%に留まっています。

一方、世界の有力大学の多くが20%を超えています。特にイェール大学31.0%、オックスフォード大学38.1%、ケンブリッジ大学41.4%と高水準である現状を考えると、日本の外国人教員の数はまだまだ不足していると言えます。

参考:大学教育の国際化について(文部科学省高等教育局)

出典:「Times Higher Education - QS World Ranking 2008 Top 100 Universities J QS Quacquarelli Symonds Limited『学校基本調査(H20年度)

大学の国際化に必要なもの

大学の国際化を進めるには、外国語スキル、質の高い教育基盤、外国人留学生・教員受け入れ体制が必要不可欠です。

英語をはじめとした高い外国語スキル

世界中でグローバル化がスタンダートになり、英語をはじめとした外国語スキルに求められる水準が高くなってきました。単語・文法の理解に加え、目的に応じて使い分けられる能力が必要です。

大学の国際化を達成するレベルとするには、大学における外国語のカリキュラム・コースの充実、英語といった特定の言語のみで学位取得が可能な仕組みなどを取り入れ、国際的人材を養成する言語学習の環境整備が重要です。

質の高い教育基盤

質の高い教育基盤として「大学の国際化を支えるベースとなる部分」をしっかり固めることで、多種多様な留学生・研究者・教職員を受け入れる体制や、カリキュラム・コースの効果最大化が見込める環境が整います。

また、質の高い大学教育の提供によって国内外の優秀な人材が集められれば、競争優位性のある研究活動、優秀なグローバル人材の輩出など、世界に通用する成果を出せる大学教育の実施が可能です。

外国人留学生や教員の受け入れ体制

外国人留学生・教員の受け入れ体制の大幅な整備・拡大によって、より多くの外国人人材の参入を進める必要があります。

例えば、主要授業をすべて英語で実施、外国人留学生の言語・文化の理解、日本人との境を作らない環境整備、寮の整備といった生活環境の見直しなどが、施策として考えられます。
また、外国人留学生・教員が日本国内で問題なく生活・学習できる環境づくりは、大学の国際化における重要なポイントです。

海外における企業の進出と雇用

大学の国際化によるグローバル人材の育成・輩出のニーズが高まる背景として、海外における日本企業の進出・雇用状況を紹介します。

現地法人の進出及び撤退の状況

経済産業省大臣官房調査統計グループ構造・企業統計室「第53回海外事業活動基本調査概要」によると、2022年度に進出した現地法人(新規設立)数は180社と前年度より11社増加しています。

地域別に見ると、ASEAN10、その他アジア、その他に進出した企業が増加し、中国、北米、欧州に進出した企業は減少しています。

また、進出先から撤退した現地法人は720社と、前年度より72社減少しました。製造業は260社で増減はなく、非製造業は460社で72社の減少です。撤退比率(撤退現地法人数/(対象現地法人総数+撤退現地法人数)×100)は2.9%で、欧州で増加、アジア、北米では低下しています。

参考:第53回海外事業活動基本調査の概要|経済産業省大臣官房調査統計グループ 構造・企業統計室

現地法人の雇用の状況

2022年度末の現地法人従業員数は557万人と、前年度より2.1%減少しています。業種別、地域別の状況は以下のとおりです。

製造業408万人(前年度比▲2.7%)
  • 輸送機械:163万人(前年度比▲1.1%)
  • 情報通信機械:51万人(前年度比▲8%)
  • 化学:16万人(前年度比▲14%)
非製造業:149万人(前年度比▲0.6%)
  • 小売業:17万人(前年度比▲9.4%)
  • サービス業:25万人(前年度比+11.3%)
  • 卸売業:63万人(前年度比+3.5%)
地域別
  • アジア:365万人(前年度比▲3.3%、ASEAN10と中国が減少、その他アジアが増加)
  • 欧州:61万人(前年度比▲4.9%)
  • 北米:87万人(前年度比+3.2%)

参考:第53回海外事業活動基本調査の概要|経済産業省大臣官房調査統計グループ 構造・企業統計室

アフターコロナで、海外進出を縮小しようとした企業はわずかで、多くの企業が海外進出を本格化させています。今後は、従来のビジネスモデルの転換が求められ、オンライン・オフラインを掛け合わせたビジネス展開、海外向けのWebサイトの構築やSNSの活用が求められるでしょう。

国による大学の国際交流の現状と取組

現在、日本で進められている大学の国際交流の現状と取組を紹介します。

スーパーグローバル大学事業では、以下の成果が得られました。

  • 政府と大学の足並みが揃っている
  • 地域社会など幅広いステークホルダーに注目している
  • トップ大学以外も参画している
  • バーチャル交流を促進している
  • 目標の明確な数値化が行われている

一方、以下の点で課題も見られました。

  • 「留学」に重きを置いている
  • 包括性に課題がある
  • 留学生の日本定着を阻む障壁がある
  • 北米・欧州偏重である

大学国際化ソーシャルインパクト事業は、「何のために国際化をするのか」という観点で進めることが求められます。現代において、大学国際化におけるソーシャルインパクト事業では、SDGsが重要な観点に挙げられます。国際社会と地域社会、いずれにも恩恵があるものであるべきです。企業も巻き込み、教育業界だけでなく、社会全体に成果を展開していくことが、次のステージとして求められています。

大学の国際交流は、多様な価値観をもつ人々が1つの目標に向かい、切磋琢磨する人材の育成に役立ちます。経済問題のみならず、環境問題や政治的な問題など、世界が抱えるさまざまな問題に向き合える人材が求められています。組織に頼らず、個人で改革を起こそうとする優秀な人材をいかに定着させるかが、日本の課題です。

大学の国際化には経験とノウハウの蓄積が重要

大学の国際化を達成するには、実際に教育の国際化を推進してきた大学の経験・ノウハウを蓄積し、蓄積したものをほかの大学へ共有することが大切です。特に、国際化を進めるうえで重要な分野の経験を、共有する仕組みの構築が必要です。

例えば「一定以上の日本語力を必須としない外国人留学生受け入れ」なら、外国人留学生の言語に対応した外国語カリキュラム内容、教員のレベル設定と配置、外国人留学生が安心して学べる環境づくりなどが考えられます。

これらの対応を大学同士の経験・ノウハウの共有・活用し、適切に設定していきます。


まとめ

大学の国際化とは、日本人の海外留学支援、外国人留学生の受け入れ体制の整備などを推進し、大学の教育基盤の強化や国際競争力を高めるための施策です。日本における大学の国際化には、受け入れ外国人留学生の偏り、新型コロナウイルスの影響による外国人留学生・外国人教員の不足などの課題を抱えています。

課題を解決するには、実用性の高い外国語スキルを有する国際的人材の養成、世界に通用する質の高い教育基盤構築、外国人留学生受け入れ体制拡大、国内拠点整備などが必須です。

大学の国際化を達成するために特に大切なことは、これまでさまざまな大学で蓄積された国際化の経験・ノウハウを共有してもらい、活用することです。大学同士が連携して国際化を進め、相乗効果による日本の国際化の地盤固め・引き上げを推奨します。

大学の国際化に向けた体制構築にご活用いただける資料をご用意しております。以下のバナーよりぜひご覧ください。

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