産業界と学校が一体となるからこそ実現できる経験や学びを子どもたちに届けたい――。
デジタルからヒューマンまで異なる多様なリソースを掛け合わせることで新たな価値を創造し、様々な社会課題を解決できる人材を育てたい――。
そんな想いをもとに、150以上の企業、団体、学校の会員が所属する「誰もがカンタンにIoTが使える世界」の実現を目指すコミュニティと、子どもたちとの出逢いと共創の場を提供するプログラム「ifLinkスタートアップCamp!」。
今回はそんな「ifLinkスタートアップCamp!」を活用した学校の事例と、開発者インタビューの模様をお届けします。
IoTを使った社会課題解決アイデアを高校生が企業にプレゼンテーション
2024年10月、東京都内で開催されたビジネス共創イベントifLink EXPOで、青稜高等学校(東京都品川区)の生徒がifLinkスタートアップCamp!で考えた社会課題解決アイデアを、企業や学校関係者を含む多くの参加者の前でプレゼンしました。プレゼン終了後には参加企業の方から名刺交換を求められるなど、生徒は社会とのリアルなつながりを肌で感じ取っているようでした。
発表アイデア
- 「通勤・通学ラッシュの際に空いている車両が一目で分かるようにし、快適な通学を実現する」
- 「日本の農業が抱える諸課題をIoTで解決し、持続可能な食料の供給を実現する」
先生のコメント
青田先生ご登壇 無料WEBセミナーのお知らせ 「DXハイスクール」何をする? ~事例から学ぶ進め方のヒント~
- 配信期間
- 2025年1月23日(木) ~ 2月21日(金)(オンデマンド配信)
- 申込締切
- 2025年2月20日(木)
詳しくはこちら
ifLinkスタートアップCamp!プログラム開発者インタビュー
ifLinkスタートアップCamp!の開発プロジェクトメンバーである東芝デジタルソリューションズ 兼 ifLinkオープンコミュニティの丸森宏樹氏とJTBの平尾篤之に話を聞きました。
プロフィール
――はじめにifLinkについて教えてください
- 丸森
- ifLinkとは、IFとTHENという形で様々なモノやサービスを連携、動作することができるIoTのプラットフォームです。例えば、IFで温度センサーを使用し、部屋の温度が15℃以下になった場合に、THENでエアコンを自動的にオンにする、といった設定を作ることで、ユーザーの困りごとを解決できます。ユーザーが抱える課題に対して、ifLinkにつながるモノやサービスの中から、ユーザー自身が自由に組み合わせを選び、自分に合った解決策を構築できるのが特徴です。
――コミュニティがあるそうですね。
――コミュニティから実際に生まれたサービスや商品はありますか?
――ビジネス中心のコミュニティから、教育にアプローチしようと思ったきっかけは何ですか?
――学校の先生はifLinkオオギリのどこに魅力を感じたのでしょう?
- 丸森
- 先生方からは、「課題を自分で考えることの大切さ」に気づかせてもらえたという声を多くいただきました。課題を解決するためのソリューションに該当するIFーTHENを考えることも大切ですが、その前にユーザーの困りごとを自分で考えるというプロセスを、ゲームをするかのように、体験を通じて楽しく学べるのが非常に良いということを仰っていました。学校では先生から与えられた問題を解く、という学びが自ずと多くなると思うのですが、社会に出ると逆で、問題が与えられていないところから自分でその問題を見つけなければいけない場面がほとんどです。
ifLinkオオギリは企業のメンバーが開発したので、自ら課題を発見することの重要性に着目してフレームを開発したことから、このような評価につながったのだと思います。
――丸森さん自身が課題発見の重要性に気づいたのはいつですか?
- 丸森
- 企業に就職してからです。入社当初は、会社のソリューションをそのまま提案すれば良いと思っていましたが、お客様ごとに課題が異なることに気づきました。課題を明らかにしないと、最適な提案はできません。常にユーザー視点でお客様が何に困っているのか、その本質を探る姿勢が重要だと感じています。課題発見は、最適な解決策を提供するための第一歩であり、オオギリのフレームは実社会で求められる思考のプロセスを、体験を通じて学べるツールだと感じています。
――オオギリはそれからどのように発展していったのですか?
――カードゲームにこだわった理由は何ですか?
――ifLinkスタートアップCamp!はどのようにして生まれたのですか?
- 丸森
- ifLink EXというツールを使った学びを、学校に大きく展開していきたいと考えていたタイミングでJTBさんがコミュニティに入会されました。教育事業をやられていることから親和性が高いと考え、私からifLink EXを紹介させてもらったのがきっかけでした。
――共同プロジェクトで苦労されたことはありますか?
- 丸森
- このプロジェクトには、JTBさん以外にも複数の会社が関わっています。関わる会社が増えれば増えるほど、各社の狙いが交錯したり、認識のズレが生まれやすくなるので、プロジェクト設立当初は何度もお互いの主張をぶつけ合ったりもしました。ですが、共創を通じて何が実現したいかという「共通のゴール」を全員で描いてからは大きなトラブルもなく円滑に進めることができましたね。
――そのゴールとは何だったのですか?
――コミュニティ参加企業にとって、中高生とつながるメリットは何ですか?
- 丸森
- 子どもたちの柔軟な発想に出会えることです。ifLinkオオギリ一つとっても、子どもたちの方がすごい数のアイデアを出すんです。子どもたちは純粋に真面目に向き合ってくれるからこそ、大人には出せないようなアイデアや日常の困りごとが沢山出てきます。そこには、本当に実現してほしいニーズが書かれていたり、社会人じゃ考えないような予期せぬIFーTHENの組み合わせが考えられていたりするので、子どもたちが考えるアウトプットはすごい可能性を秘めていると常々感じています。
――ifLinkスタートアップCamp!を通して子どもたちに最も伝えたいことは何ですか?
- 平尾
- 課題解決志向を兼ね備えたデジタル人材を育成したいですね。今の日本にはデジタルを活用しながら自分自身で課題を解決する力を持った人材が不足しているという課題があります。その両方が学べるというのがこのプログラムの強みです。あとはやはり共創ですね。様々な企業とか仲間と共創しながら考えることができるのがこのプログラムの魅力じゃないですかね。
――先生方に対してはどうですか?
- 丸森
- ifLinkスタートアップCamp!では、コミュニティ参加企業からファシリテーターを学校に派遣するので、先生にすべてマスターしてもらう必要はありません。また、子どもたちと実社会との接点が生まれるため、学校の中だけでは教えることができない学びを届けられる点がこのプログラムの大きな特徴です。
- 平尾
- 最近では社会との接点を求める学校も増えていますが、先生方だけで社会との接点を作るのはなかなか難しいと思います。その点、私たちは150を超える企業や団体とつながっていますので、そのネットワークをフルに活用してもらいたいですね。
――今後の展望について教えてください。
- 丸森
- 子どもたちが考えたアイデアをビジネスに活かした事例は、まだまだ多くはありません。このプログラムでは、企業と連携し、アイデアを実用化するための環境が整っています。子どもたちが考えたアイデアが世の中に実装され、実際に困っている人々の問題を解決し、社会に貢献できたという体験を提供していきたいと強く思っています。
まとめ
昨今、AI、IoTなどの先端IT技術の躍進や、DXによる需要増加などにより、社会全体にデジタル技術を活用して様々な社会課題を解決できる人材を求める声が急激に高まっています。私たちはこのプログラムが提供する子どもたちと企業との共創的な学びの経験を通して、AI社会をたくましくしなやかに生き抜く第一歩を踏み出してほしいと願っています。