コロナ禍を経て、多くの学校で再開されている海外教育旅行。学校や生徒、保護者は今何を期待して、海外に向かっているのでしょうか。
今回はグローバル研修に力を入れている富士見中学校高等学校のグローバルセンター長 伊藤 恭子氏に、「海外教育旅行に学校が求めているもの」をテーマにお話を伺いました。現在取り組んでいるグローバル研修の特徴や参加する生徒、保護者の期待、さらには海外研修を充実させるために必要なことなど、参考になるお話が盛りだくさんです。
また記事の後半では、最新の現地プログラムや教育活動の効果測定システムについてもご紹介しています。ぜひ最後までご覧ください。
本記事は2024年9月26日に配信された「JTB海外教育旅行セミナー2024」をもとに執筆、一部編集してお届けいたします。
INDEX
インタビュー:海外教育旅行に学校が求めているもの
学校が取り組む海外教育旅行(グローバル研修)の特徴を教えてください。
「派遣先の多様化」と「内容の多様化」が挙げられます。本校では、生徒が自身の興味関心に沿って選べるように、研修を設定するようにしています。生徒が意思をもって選択できることが大事だと考えています。
学校として特に力を入れている点とその理由は何でしょうか。
研修に向かう前の事前学習には特に力を入れるようにしています。
生徒には何のために、何を目標に行くのかという事を意識して研修に参加してもらうことで有意義な時間を過ごしてもらいたいと考えています。そのため、事前にオンラインのフォームを使うなどして、生徒に目標や気持ちを言語化してもらうようにしています。
また帰国後にも、自身が設定した目標が達成されたかどうかの振返りや全体でのフィードバックなどを行っています。
では生徒や保護者は何を期待して参加していると感じますか?
英語圏への研修では、やはり英語力の上達が一番ですね。また生徒ではコミュニケーション能力の向上を目標にする人が最近増えてきました。日々の授業や探究学習などの中で、コミュニケーション力が大事だなということを生徒自身が感じているのだと思います。保護者の方からは、新しい体験から何かしらを得てきて欲しいという声を聴くことが多いですね。
学外サポートで活用されているものはありますか?
研修や留学であれば旅行会社や研修会社を使っているので、そこが提供する留学やホームステイのオリエンテーション、コミュニケーションスキルに関するワークショップを実施してもらったりしています。
更に最近は「自己探求」の研修を留学に行く生徒向けに実施し、自分は何者なのか、何ができて、何を伸ばしたら良いかを考えるようなプログラムを外部業者に依頼することもあります。
海外研修に参加した生徒にどのようなことを期待していますか?
海外に行くということは、学びを広げることにつながります。その中で「グローバルな世界で生きる」という自覚をもって欲しいと考えています。本校が考える4つのグローバルスキルを身につけた上で、これからの社会で活躍して欲しいと願っています。
海外研修の前後で感じる「生徒の変化」はどのようなものがありますか?
変化の内容もスピードも、生徒それぞれで異なります。例えば英語に少し自信が無かったけど、単語やジェスチャーで通じた!という経験から、英語ができるという自信につながった。逆に上手くできなかったからもっと頑張ろうというモチベーションになることもあります。それまで授業中のグループワークで前に出られなかった生徒が、研修を通して身につけた自信によって積極的に前に出られるようになるといった変化がみられたりします。
最後に、海外研修を充実させるために旅行会社に求めることはありますか?
1つはここまでも述べてきましたが、事前事後学習です。冒頭で触れたような研修を通して何を学んでくるかなど研修の効果を深めるための心構え的な事前事後学習を、作っていっていければと考えています。
そして2つ目は多様なプログラムがあるといいなと感じています。生徒の興味も多様化している一方、一つの学校だけでは尖ったプログラムを準備するのは難しいという現状があります。そのため、複数校で合同のプログラムができると、生徒間での刺激にもなり、生徒たちのやりたいことも広がってくるのかなと感じています。
海外研修のおすすめプログラム・サービスの紹介
ここからはJTBがおすすめする現地プログラムを2つご紹介します。また昨今導入が増えている教育活動の効果測定システム“J's GROW”について、フィードバック事例をご覧いただけます。ぜひ海外研修をご検討される際の参考になりましたら幸いです。
現地プログラムの紹介① Global Link
「海外教育旅行」といっても、その目的は様々。その中で、探究・課題研究の成果発表にフォーカスを置いているのが、“Global Link(グローバル・リンク)”です。毎夏、シンガポールとオーストラリアで行われるコンテストイベントであり、アジア太平洋地域の中高生が集い、英語で自身の研究を発表・議論し、交流できる場となっています。
- 詳しくはこちらから
- 課題研究・探究の世界大会 “Global Link”
- 公式WEBサイト
- https://www.edunet.or.jp/gl/
現地プログラムの紹介② ホノルルフェスティバル
ただ海外に行って英語を勉強するのではなく、ボランティア参加を通して、英会話の実践・異文化交流・イベントサポート等の様々な体験の場を提供できるのが、ハワイ最大級(※)の文化交流イベント“ホノルルフェスティバル”です。交流文化・教育・環境という3つのキーワードを掲げている本イベントは、3月に3日間開催され、多くの生徒・学生も参加し、高い満足度を得ています。
第28回目の開催となった2024年には約15.7万人が観覧
- 詳しくはこちらから
- ホノルルフェスティバル
- 公式WEBサイト
- https://www.honolulufestival.com/ja/
教育活動効果測定システムJ's GROWサービス紹介
学校行事や探究における様々な教育活動が、生徒のコンピテンシー変化にどのような影響をもたらしたかを可視化できるのが、“J's GROW”です。実際に海外教育旅行で測定を行った学校のフィードバック事例は以下をご覧ください。
今回のセミナーでは海外教育旅行に関して、学校の声や現地プログラムの紹介、そして現地に行った後に生徒にどのような変化がみられたかを可視化するシステムについて、ご案内しました。海外教育旅行について、悩んでいる先生方の一助となりましたら、幸いです。
また今後、海外教育旅行を計画する際に、どのようなことから始めるべきか、何に注意するか等を掲載した「海外修学旅行の教科書」をご用意しています。ぜひ以下からダウンロードの上、ご参照ください。