広島を拠点に日本全国で平和活動を行う若者とともに、平和について語り合い、自身のあり方を見つめる平和教育プログラム「ピースダイアログ」。
NPO法人Peace Culture Village(以下、PCV)が中心となってプログラムの運営を行い、JTBとともに多くの子どもたちに対話を通した平和学習を届けてきました。
広島の記憶を継承する担い手が“若者”であることの価値はどこにあるのか。そして、なぜ“対話”なのか。プログラムに込めた思いを、PCVの運営メンバーに聞きました。
INDEX
過去はすベて、今の私たちに繋がっている
- 山口さん
- 「世界の人から見て、“HIROSHIMA”は特別な場所なんだと知りました。まずは私自身が広島のことを自分の言葉で伝えていける人になりたいと思い、改めて広島のことを学び始めたんです。でも、当時は大学生で仲間はいませんでしたし、すごく孤独でした。広島や原爆という言葉を目の前に、何をどう伝えていけばいいのかもわからなくて。『私にはこんなことできない』と諦めかけていました」
そんなとき、偶然PCVのメンバーと出会います。「PCVが伝えたいのは、未来なんだ」というメンバーの言葉は、山口さんの視野を大きく広げてくれるものでした。
- 山口さん
- 「最初は、『過去を学ぶことが未来って、どういうこと?』と思っていました。でも、話を聞けば聞くほど、これは未来に繋がることなんだと確信するようになりました。広島で起こったことは、ただの歴史の1ページではない。すべては今の私たちに繋がっていることであり、これからどんな未来をつくりたいのかを考えていくことが学びなんだと思ったんです」
当時、2019年。新たな平和教育プログラム「ピースダイアログ」の開発に向けて、PCVとJTBが共同で動き始めたタイミングでした。メンバーから声をかけられたことをきっかけに、山口さんはプロジェクトに参画することを決めます。
若者から若者へ。「平和」を伝え、ともに学ぶ
平和教育プログラム「ピースダイアログ」は、平和記念公園内を80分ほどかけて歩く「ピースパークツアー」のほか、平和文化について対話する「ピースワークショップ」、広島を訪れる前のマインドセットや訪れた後の振り返りを行う「オンライン事前事後学習」の3つが柱となっています。2020年からの3年間で、約42,000人もの子どもたちが「ピースダイアログ」に参加しました。
- 山口さん
- 「これまで多くの生徒にプログラムを提供してきた中で、たくさんのことを学んでくれたのは喜びの一つです。それと同時に、私にとってはピースバディの成長を見続けられることも、何より嬉しいことです」
ピースバディの“問い”から、自分自身と向き合っていく
ピースバディを始めた当初は、「上手く説明できるか」を気にしていたという西本さん。今は「生徒たちにどう伝わったか」を意識するようになったと言います。ピースパークツアーの最後はグループごとに集まり、印象に残ったことや自分が大切にしたいものについて振り返り、仲間と共有します。平和記念公園内の一角で、真剣にクラスメイトの言葉に耳を傾ける生徒たちの姿がありました。
種をまき続けることで、小さな芽が出る瞬間がある
社会人でピースバディとなった浅海智絵さんは、自身の役割を「種まき」だと言います。
- 浅海さん
- 「いろんな生徒たちと関われることは楽しいですし、私自身が学ばせてもらっている感覚があります。中高生のときに平和について学び、興味を持ってくれる子が増えたら、世界はきっと良くなる。私たちがやっていることは、その種まきなんです」
ツアーが終わっても、ピースバディの学びは終わらない
そんな風に思いを持って生徒たちと向き合うピースバディは、現在100人を超えています。中には、高校時代に「ピースダイアログ」に参加したことがきっかけとなってピースバディになった学生も。実は、PCVは継承者の育成として、ピースバディに向けて充実した研修プログラムも用意しています。
PCVの文化として根付いているのは、毎回メンバー同士で行うチェックインとチェックアウト。ピースパークツアーの前には必ずその日の意気込みや意識したいことをそれぞれが話し、仲間と共有します。ツアーを終えたあとは、良かった点や改善したい点を再び仲間と共有。上手くいかなかったことを共有することで、ピースバディ同士がアドバイスし合うこともあります。チェックインとチェックアウトのねらいを、山口さんはこう話します。
常葉大学附属橘高等学校のプログラム実施の様子を動画でご紹介しています。
詳しくはこちら(動画にリンクします)
ピースパークツアーに参加した先生と生徒の声
「ピースダイアログ」の導入を決めた先生や参加した生徒は、プログラムについてどのように感じているのでしょうか。修学旅行で広島に訪れた常葉大学附属橘高校の先生と生徒の感想をご紹介します。
常葉大学附属橘高校 佐藤宣昭先生
2年生 桑原るりさん
2年生 諸角木葉さん
同じビジョンを持つ仲間とともに、旅の可能性を拡げる
平和教育プログラム「ピースダイアログ」は、「MY LIV PROJECT~私のWell-beingに出逢う旅~」のプログラムの一つ。LIVは、デンマーク語で「人生」や「存在」といった意味をもつ言葉です。
たった一人との出逢いで、人生は変わる。
私たちはそう信じ、多様な日本全国の仲間と手を取り合い、子どもたちの人生に価値ある出逢いと対話の機会を創出します。
そして、プロジェクトに関わる全ての人が共に学びあい、成長し、一人一人の中にあるWell-beingが、他者や地域社会へ派生・循環する、平和で心豊かな社会の実現を目指します。
「ピースダイアログ」では、「平和」をキーワードに、共通の思いを持つPCVとともにプログラムを作り上げてきました。あらかじめ決められたプログラムをそのまま提供するのではなく、先生と対話を重ねながら、子どもたちの可能性を拡げる旅を創っていきたい。私たちはそう考えています。