埼玉県川越市では「令和5年度 埼玉県新たな地域クラブ活動実証事業」の一環として、市内の公立中学校のサッカー部員を対象として、川越市をホームにJリーグを目指す社会人サッカーチーム「COEDO KAWAGOE F.C.」の所属選手らによるサッカー指導を実施しました。この事業成果をJ’s GROWを用いて検証した事例をご紹介します。
- 背景
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学校部活動は、少子化などの影響によりこれまで通りの活動を実施することが困難になりつつあります。また、顧問の先生の長時間勤務や専門外の部活動を指導することの課題も挙げられていました。そこで、地域のスポーツクラブやクラブチームが、部員数や指導者の確保が難しい中学校を対象に指導を行い、その成果を普及することで、生徒に多様な活動機会を提供できる環境整備や、誰もがスポーツに親しめる地域づくりを図ることを目的として本事業が実施されました。
- 導入目的
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本事業の一環として、川越市では生徒の「競技力向上」を主な目的として、社会人サッカーチーム「COEDO KAWAGOE F.C.」の所属選手らがドローンを使いながらのべ5回に渡って市内2校の公立中学校サッカー部の指導を行いました。こうした指導がサッカー部員の意識や行動にどのような影響を与えたかをアセスメントツールを用いて測定することで、生徒の競技力向上や成長にどう繋がったのかを定量的な視点で分析し、データに基づいた事業の成果検証を行うことを目的として、J’s GROWの採用に至りました。
- 事業実施内容
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対象生徒
川越市立大東中学校サッカー部(18名)、川越市立南古谷中学校サッカー部(38名)
指導内容
- 期間
- 2023年12月中旬~2024年1月下旬
- 回数
- のべ5回
- 内容
- 下図参照
- 成果検証結果
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J’s GROW測定日
- 事前測定&事前アンケート:2023年12月26日(火)
- 事後測定&事後アンケート:2024年1月下旬
J’s GROW測定結果
J’s GROWの測定結果からは、12/27の練習試合が、参加生徒の意識変化や行動変容に最も大きく関わっていたことが判明しました。行動変容については、特に「論理的思考」と「影響力の行使」との相関性がデータから強く認められました。その理由としては、12/27の練習試合がそれまでの2回の練習で現役社会人サッカー選手に教わったスキルやテクニックを発表する場となったことが影響したと推測されます。
さらにデータを細かく見ていくと、今回の活動が生徒の多様な意識変化や行動変容に大きく寄与していることが読み取れました。
これらのことから、川越市における今回の事業実施目的である「競技力向上」や、目指したゴール「相互理解・働きかけがチームスポーツにおける競技力向上に繋がり、生徒が成長している」状態が一定程度達成できたことがデータの面からも明らかになりました。
データに基づいて後日JTBが実施した先生方へのフィードバックでは、サッカー部顧問の先生から「現役の社会人サッカー選手に体を動かして見本を見せてもらえたことが印象深かったのでは?」というご意見も聞かれるなど、日頃の部活動指導の在り方をデータをもとに検証し、今後の改善につなげていく機会になりました。
- 先生の感想
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南古谷中学校 葛山先生
今回のフィードバックを聞いていて、自分が感じていた結果と概ね同じ結果が出ているなと感じました。また、共感・傾聴力が様々な行動変容に繋がったという結果については、日頃から色々な人の話を聞いていくことを指導していたことが結果に結びついたのかと感じました。今回の経験をもとに、試合で出来なかったことを練習でいかにできるようにやっていきたいと考えています。
大東中学校 鶴崎先生
瓜谷選手の指導は素晴らしく、試合に勝つために考える姿勢が身について、論理的思考があがったことは納得できる結果でした。
影響力の行使(リーダーシップ)を意識変容は見られても、行動に移せる人はばらつきが出ているという結果についても、自身で感じていたことと同じ結果が出ているなと思いました。
- おすすめポイント
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今回の事例では、「部活動地域移行」という社会課題解決のために都道府県や市町村などの自治体が実施する実証事業の成果検証ツールとしてJ’s GROWをご活用いただきました。個々の教育活動が生徒にもたらした影響を定量・定性の両面から検証できるJ’s GROWは、中高生の海外派遣事業や地域人材育成事業など、様々な事業の成果検証にもご活用いただけます。詳しい資料をご用意していますのでぜひご覧ください。
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これまで学校教育の一部とされていた部活動を、外部のプロサッカー選手が指導すると生徒にどのような変化が起きるのか、非常に興味深い効果検証となりました。今後も、J's GROWを活用し、学校や自治体に寄り添った取り組みをしていきます。