2025年3月、対面におけるコミュニケーション力見える化ツール「Baoble」がリリースされました。本ツールがどんなシーンで、どのような課題を解決できるのか。
起案者の武井さんへのインタビューと専門家の方々の話を交えながら、サービスの特徴や魅力を紹介します。

ビジネスコミュニケーションに求められる“温度感の把握と関係構築”
ーまずはじめに、「Baoble」のアイデアが生まれたきっかけを教えてください。
- 武井 綾香(以下、武井)
- 私はJTBのビジネストラベルを取り扱う会社に所属しており、以前は出張手配や経費精算のツールを扱う部署にいました。
あるとき、お客様から「出張者が本当に行くべきか否かを判断できるようなデータはないか」「出張に行った後の効果測定ができないか」という要望をいただいたことがありました。
企業内の出張が多い部署では、申請者から申し出があった際、承認者は背景までを深く理解せず、形式的に承認をしている。さらに、出張に対する効果測定も行われていないケースがよくあるようです。
ーたしかに「本当に出張が必要か」「出張が有効だったか」を第三者が判断するのは難しいかもしれません。
- 武井
- 出張の必要性や重要性は出張者本人に委ねられ、効果についても本人の主観で評価されていることが多いように感じます。
そこで、出張の必要性や重要性、効果などを承認者や第三者が客観的に判断できるものがあれば、経費削減・業務効率化につながると思ったんです。
同時に、さまざまな企業へリサーチをしたところ、近年は、改めて対面コミュニケーション(出張)を求めていることが見えてきました。お金や時間がかかる対面の機会がなぜ必要なのか。
それは、温度感の把握と関係構築です。
ー企業は出張の実態を可視化・見直しするだけでなく、対面の効果を最大化することも求めていた、と。
- 武井
- 温度感の把握と関係構築には対面が有効ですが、指標がないため主観によって評価がされやすくなります。
そこで、対面コミュニケーションの声から得られる情報をデータ化することで、温度感の可視化と人間関係構築の後押しができる。さらに、営業や面接・面談、会議など、さまざまなビジネスコミュニケーションに活用できると感じました。
ー企業からの要望がヒントになり、アイデアが広がっていったのですね。
- 武井
- アイデアをブラッシュアップする過程で、前述の企業に提案する機会はあったものの、残念ながら契約に至りませんでした。
しかし、上司からの勧めによりJTBの新規事業公募制度に応募し、複数回のプレゼンと磨き上げを経て事業化が決定。専門家の方々の協力を得て、対面におけるコミュニケーション力見える化ツール「Baoble」が生まれました。

コミュニケーション力を多角的に見える化する
- 武井
- Baobleは、商談や面接、会議などビジネスシーンにおける対面コミュニケーション力の分析・可視化・改善ができるツールです。

言葉に基づく言語コミュニケーションと言葉以外の相槌、盛り上がり、沈黙などの非言語コミュニケーションの両方を組み合わせ、コミュニケーション力を定量的に可視化しています。
特に、非言語コミュニケーションの要素をメインとして可視化している点は、他社のサービスにはありそうでなかった特徴です。
ーBaobleの名前の由来を教えてください。
- 武井
- 1943年にアメリカで出版された小説『星の王子さま』のなかに、こんなフレーズがあります。
「かんじんなことは、目に見えないんだよ」
目に見えないものを見えるようにすることで、ビジネスコミュニケーションの課題解決につなげていきたい。そんな思いを込め、小説に登場する「バオバブの木」と接尾語の「able」を組み合わせ、「Baoble」と名付けました。
ー音声データをもとに分析をしているようですが、どのようにデータを集めるのでしょうか。
- 武井
- たまご型レコーダーを置いて音声データを収音。座席の位置で、話す人を識別できるため、複数人による会議でもレコーダー1台で対応できます。
また、リアルタイムで連携がなされているため、商談中に分析結果を確認ができ、タイムリーに軌道修正を行うことができます。
ーどのような分析機能が備わっていますか?
- 武井
- まず、会議やコミュニケーションの目的に合わせて分析したい内容を設定。そして、会話のバランスや盛り上がり状況、双方向性などから、会議やコミュニケーションの総評が点数とともに示されます。
また、参加者ごとに声を聞き分け、発話の量や傾向(一方的・双方向的)などを可視化し、それぞれの特徴や役割タイプを判定。改善策やアドバイスを受けることもできます。

- 武井
- さらに細かく、誰のどんな発言によって会話が盛り上がったか、誰の何という発言が沈黙を打ち破ったのか、参加者が無意識的に発していた口癖なども分析できます。
会議全体の要約とともに、次回のタスクも示されるため、分析から次の行動を促すことができます。
ーBaobleは複数の専門家の方々と開発をしてきたようですね。
- 武井
- Baobleは、非言語コミュニケーションの専門家である大坊 郁夫先生に監修いただいています。Baobleのコンセプトや機能についてのアドバイスをはじめ、教え子の研究者の方をご紹介いただき、定義設計にも協力いただきました。
また、音声データの解析・システム開発・専用デバイス提供には、ハイラブル株式会社が支援してくださっています。
非言語コミュニケーション研究の先駆者が語る、Baobleの魅力と可能性
ーここからは、大坊 郁夫先生にBaobleの特徴や魅力を聴きました。
ー初期段階で、Baobleの構想を聞いたときの感想を教えてください。
- 大坊 郁夫先生(以下、大坊)
- はじめてサービスの構想を聞いたとき、とても興味深いと感じました。私も長年研究してきたコミュニケーション研究の成果が活かされる事業だと思いました。
Baobleでは、たまご型の音声マイクで、一人ひとりの声を識別できます。この点は、ビジネスの現場で活きる大きなポイントです。
加えて、これまでは経験レベルで捉えられていたものが、複数のエビデンスによって可視化される。目的に合わせ、個人や組織全体など範囲を分けて、特徴が示せることは大きな魅力ですね。

ー近年のビジネスコミュニケーションの傾向において、Baobleはどんな価値を見出せると思いますか?
- 大坊
- ビジネスコミュニケーションの分野では、長年、生産性が重視されています。
生産性を向上するために個人のリーダーシップが注目され、その後はチームに目を向けられるようになってきました。近年は、プロジェクトや目的に合わせチームを形成するようになり、柔軟性や流動性が注目されています。
そのような変化のなかで、社員の特性(パーソナリティなど)に目を向けることが大切だと思っています。個性や人柄を考慮すると、一人ひとりに適した役割が見え、組織のなかでどのように成長させるのか、教育にもつながってきます。同時に、人事配置が決まり、チームが構成されていく。
Baobleを活用し、一人ひとりのコミュニケーションを可視化することで、個人の特徴が見えてくる。すると社員の成長、チーム構成の手助けになるのです。
個人の経験や感覚に依存した、ビジネスコミュニケーションの評価には限界があります。あらゆる業界においてエビデンスに基づいた、見える化した評価が重要になってきます。それが、生産性向上や働く人のエンゲージメント向上にもつながっていくでしょう。
その際、Baobleが示すレポートを共有することで、関係者の認識や気持ち、目指すべき方向性が明確になっていくでしょう。
ースタート当初から支援してきたハイラブル株式会社の水本 武志 代表取締役CEOにも、Baobleの特徴や可能性を語っていただきました。
- 水本 武志 代表取締役CEO(以下、水本)
- これまでさまざまな企業様と実証実験などを行ってきましたが、新規事業としてリリースしたケースは今回がはじめてです。
コミュニケーションの可視化について、文字起こしツールなどは最近よく見かけます。しかし、対面の商談で、発話の回数や会話のパターンなどを可視化することは簡単ではなく、それらを深く理解して事業に結び付けたことで他にはないサービスができあがりました。
ー開発において苦労した点を教えてください。
- 水本
- Baobleの特徴の1つに、コミュニケーションの目的ごとに会話の点数を付ける機能があります。点数を導く・評価をするためのアルゴリズムを設計にとても苦労しました。
私たちが評価尺度のベースを考え、先生方の知見・経験とJTBさんが収集してきたニーズを取り入れながら、ブラッシュアップしていきました。
ーアカデミックな知見とビジネスニーズ、双方が組み合わさっていることで、サービスの形が出来上がってきたのですね。
- 水本
- はい、双方のシナジーによって、ビジネスコミュニケーションの目的に合わせて定量的に評価を行い、さらに改善点まで示す機能を実現しました。これらの機能は、Baobleの大きな魅力だと感じています。
ー今後、Baobleに期待することを教えてください。
- 水本
- 従来の商談やビジネスコミュニケーションは、定量的な計測が難しいので、本人や上司の主観や感覚に頼るしか評価の方法がありませんでした。
一方、Baobleを活用することで、社員一人ひとりのコミュニケーションの特徴がデータで可視化されるので、個人に寄り添った教育がしやすくなります。こうしたデータを活用することで、個性を活かした多様なコミュニケーションが促進されていくのではないでしょうか。

Baobleでビジネスシーンの課題を解決
ーBaobleは具体的にどんなビジネスシーンでどのような課題を解決できるのでしょうか?
- 武井
- Baobleはさまざまなビジネスコミュニケーションの課題解決をサポートできると考えています。代表的なものとして以下3つのシーンでの活用イメージを紹介します。
- カウンターセールスや受付業務
- 人材採用・面談
- 社内会議
商談を見える化し、行動変容を実現
- 武井
- カウンターセールスや受付業務では、担当者とお客様のコミュニケーション状況の分析や評価が求められています。
顧客ニーズを的確にキャッチできているか。ロールプレイングや研修などの教育が現場で活かされているか。顧客満足につながるスキルはどのようなものか。 など、さまざま課題があります。
Baobleを活用することで、実践的ロールプレイでウィークポイントを洗い出し、担当者の行動変容につなげることができるのです。
カウンターセールスでBaobleを使ったお客様からの声
- Baobleを使ったことで普段の営業の対応こそ大事だと感じるようになった
- Baobleがロープレの審査員として加われば面白い
- 顧客満足度アンケートとBaobleの結果を紐付けたら因果関係が見えてきそう
適材適所・人材価値の引き出しを実現
- 武井
- 人材採用・面談では、実施する担当者のスキルの把握やスキルの均一化が求められています。加えて、面接・面談を受ける人の適性やコミュニケーション力の客観的な評価をしたいという人事担当者も多いのではないでしょうか。
Baobleの分析結果を参考にすることで、適材適所な採用・人員配置のサポートをし、人材の価値を引き出すことができます。
面談・面接でBaobleを使ったお客様からの声
- 教職員のカウンセリング研修に役立ちそう
- 人間力を育成する際、コミュ力を1つの指標として活用できそう
会議の効率化・効果最大化を実現
- 武井
- 社内会議では、発言内容に対する記録や評価はされるものの、会議そのものを客観的に評価し見直す機会はあまりないと思います。
活発な話し合いができているか。職位や組織を越えた会議をしたいけどできていない。会議のゴールに到達できなかった。などの課題があるようです。
Baobleによって、会議の状態を見える化し、効率向上・効果最大化につなげることができます。
社内会議でBaobleを使ったお客様からの声
- 客観的に「もっと積極的に発言した方が良い」と本人に伝えやすくなる。
- 口数が少ない、おとなしい社員でも、口火を切る係として貢献していたことが分かった(今までは発言量が多い=貢献しているというバイアスがあった)
まとめ ~Baobleで組織が変わる~
ーここまでさまざまな観点で、Baobleの特徴や魅力を語っていただきました。最後に、ビジネスコミュニケーションに対する課題を抱えている企業にメッセージをお願いします。
- 武井
- サービス開発の過程のなかで、複数の企業にインタビューを行い、ビジネスコミュニケーションにおけるリアルな課題をたくさん聞きました。
その課題を深掘りしていくと、Baobleで解決できるものばかりでした。
どの業界・業者においてもコミュニケーション力は重要視されています。しかし、データ化が難しく、さらに複数の見方があったことで、俗人的な評価になっていました。
Baobleは、ビジネスコミュニケーションの多様な価値を示せるもの。サービスをお届けすることで、企業の社員一人ひとりをサポートし、組織そのものの変革を生み出していきたいです。そして、世の中のコミュニケーションを進化させ、より深い関係性が築ける社会の実現を目指します。
- Baobleの詳細はこちら
- Baoble(音声のコミュニケーション可視化)