企業活動において、重要なキーワードになっているSDGs。企業間で取り組み内容に差はあるものの、“やらなければならない”という意識は広がっています。しかし、「何から始めれば良いかわからない」「社員を巻き込んで推進していきたいがうまくいかない」など、さまざまな課題が聞こえてきます。
本記事では、企業がSDGsを推進していくうえでの課題やポイント、オススメのソリューションを紹介。JTBで新たにスタートした「ロス旅缶」の事例をもとに、発案者へのインタビューを通して、今後のSDGs推進のヒントをお届けします。「ロス旅缶」のサービス資料もご用意しています。ぜひ、ご覧ください。
プロフィール
INDEX
SDGs推進の悩み「社内に浸透しない」「社外にアピールできない」
—— 小糸さんは、企業のSDGsに関する支援を行っているなかで、さまざまな取り組み状況を目にしていると思います。近年の傾向をどのように見ていますか?
SDGsは企業の経営戦略と深く関わっており、切っても切り離せないものになっています。また、その取り組みが企業のブランド価値やブランドイメージに大きな影響を与えています。
しかし、経営陣と従業員の間でSDGsに対する意識の差が生まれ、課題を抱えているケースも少なくありません。企業としては、KPIを設けて取り組んでいるものの、その方針が従業員に浸透していない。従業員自身が何をすべきかを理解していない、というケースをよく聞きます。
—— なぜ、従業員への浸透が進みにくいのでしょうか?
世代間での意識の違いが影響していると思います。
ミドル世代前後の従業員は、大人になって仕事やメディアでSDGsに触れているため、断片的な情報で理解していたり、人によって理解の差があったりするように感じます。そのため、会社の方針に対して自分に何ができるのかイメージができていない。
一方、 Z世代以降の若年層の従業員は、学校教育でSDGsに関して学ぶ機会があり、基礎的な情報はもちろん、実践的な思考を持ち合わせています。
多くの企業はミドル世代前後の従業員が大きな割合を占めているため、若年層の知見を十分に発揮する環境になっていないのではないでしょうか。
—— 従業員の意識の違いがあると。一方、消費者という視点で見ると、サステナブルというキーワードが商品やサービスを選ぶポイントになっているように感じます。
そうですね。近年、車を買う時にEV車を選ぶ、住宅を購入する際ソーラーパネルを設置する、外出時にマイボトルを持参する、などサステナブルを意識しながら、生活・消費活動をする人々が増えています。
各企業は、このような人々が増えていることを自覚しているものの、自社がどうアプローチをすべきか、悩んでいる声を多く耳にします。
SDGs推進のポイントは、道筋を描くこと
—— 従業員に対して、どのようにSDGsに取り組んでもらうか。消費者にSDGsの取り組みをどう伝えるか。2つの課題に対して、どんなアプローチが効果的だと思いますか?
まずは、日常に照らし合わせて伝えることが大切です。生活のトピックを切り口にすることで、従業員が理解しやすくなる。
さらに、社会課題の解決に至る“ストーリー”を設計することです。企業がSDGsを推進するうえで、従業員や消費者とどう接点を持ち、コミュニケーションを図り、課題解決に至っていくのか。一連のストーリーをつくることが大切です。
—— SDGsは一時の取り組みだけでは達成できないですし、達成に至るまでの道筋を描くことが大切なのですね。
はい。そこで、JTBでは「JTBサステナブルjourney」というソリューション・サービスを提供したいと考えています。
企業が取り組むSDGs達成への道のり(journey)を設計し、JTBグループが保有するアセットを活用して達成支援をするものです。
たとえば、以下のようなサービスがあります。
企業が実施する旅の移動や宿泊において排出されるCO2をオフセットすることで実質ゼロにする「CO2ゼロ旅行®」。イベントや会議などで使用する電気を再生可能エネルギーに置き換える「CO2ゼロMICE®」。そして、そのイベント内ギフトとして活用できるのが、食品ロス削減に貢献する「ロス旅缶」です。
このようなサービスを企業のサステナブルへの課題解決のストーリーの繋ぎ役に活用していただいています。
廃棄食品を通じた新たなコミュニケーション
—— 移動や交通、会議など日常の導線に沿ったサービスと掛け合わせることで、SDGsを身近なものに感じてもらえるのですね。新しく追加された、ロス旅缶とはどういったものでしょうか?
ロス旅缶は、生産農家より排出される規格外野菜を活用し、シェフが考案したレシピにて、企業のオリジナル「缶詰」を制作するプロジェクトです。
ロス旅缶は、以下の特徴があります。
- 地域で活動する生産農家やシェフと連携することで、地域社会と連携しながら食品廃棄率の低減に貢献できる
- 廃棄野菜を缶詰に生まれ変わらせることで、賞味期限の最大化を実現しながら日常食や非常食などさまざまなシーンで楽しめる
- 缶詰を社内イベントや社外プロモーションで活用することで、食品ロスに関する啓発活動をすることができる
- 常温保存ができるため、保存におけるエネルギー消費を抑えることができる
ロス旅缶の事業が誕生した背景など、より詳しい詳細は以下の記事で紹介しています。
—— 2023年5月にスタートしてから現在まで、どんなブラッシュアップや展開がされていますか?
—— 地域という視点で見ると、企業にとってはさまざまな活用ができそうですね。
ある特定の地域で事業をやっている企業であれば、そのエリアにおけるプロモーションにロス旅缶を活用いただくことで、自社の事業を広く告知しながら地域の社会課題解決にも貢献できます。
—— 地域一体となってロス旅缶をつくるうえで、効果を高めるポイントはありますか?
ロス旅缶をつくるうえでは、企業・自治体・生産者・シェフ・加工業者など、さまざまなステークホルダーが関わります。それぞれが異なる立場にありますが、食品ロスに対して同じ想いを持っていただくことが大切です。
そのために、JTBがハブとなり、関わるみなさんの想いを集約。缶詰にその想いを閉じ込め、日本中の人々に届けていきます。
ロス旅缶活用法 ~社内ベントから防災まで~
—— 地域連携によるロス旅缶のプロモーション例を紹介いただきましたが、そのほかにどんなシーンで活用されていますか?
社内表彰イベント・ギフト、啓発活動、防災など、さまざまなシーンで活用いただいています。
02啓発活動
SDGsや社会課題を啓発するイベントにて、理解促進コンテンツとして活用いただくこともあります。
2024年春に開催された「Warai Mirai FES 2024」では、お笑い芸人のフースーヤによるロス旅缶絵本の読み聞かせや、サステナブルクイズ大会、ロス旅缶の絵本のぬりえなど、複数の企画を実施。食品ロスを楽しみながら学ぶ機会を提供しました。
03防災
多くの企業では、防災の備蓄品としてカンパンなどを備えているでしょう。備蓄食品は賞味期限が迫り、社員に還元されるケースもあるのではないでしょうか。しかし、備蓄品であるがゆえに、食べることなく廃棄に至ってしまうこともあります。
ロス旅缶は、賞味期限が2年以上のため、備蓄品としてもオススメです。さらに有名シェフが手がけたレシピのため、賞味期限が迫ってやむを得ず消費する場合も、おいしく食べることができます。
まとめ ~社会課題解決のプラットフォーマーへ~
—— ロス旅缶がさまざまな場面で活用できることがわかりました。最後に、今後の事業の展望を教えてください。
今後は、多くの人々の日常生活で楽しんでいただけるよう、新たな食品流通チャネルでの展開を考えています。より多くの規格外野菜を活かせるよう、粉末化するなどの新たな加工方法も検討中です。
加えて、食品ロスの教育においてロス旅缶を活用いただき、社会の意識変革に取り組んでいきたいです。
JTBは「交流創造事業」を展開し、自治体や企業、教育機関など、さまざまなつながりをつくり、体験を生み出してきました。今後も、各企業や団体、地域とつながりながら社会課題解決のプラットフォーマーになっていきたいと思っています。
今回は、企業がSDGsを推進していくうえでの課題やポイントをお伝えしました。「ロス旅缶」の事例が、企業の皆様がSDGsを推進するヒントになれば幸いです。