理念浸透は、従業員のパフォーマンス向上や離職率の低下など、企業に多くのメリットをもたらします。実際、企業理念の浸透は企業成長をもたらす、と言っても過言ではありません。この記事では、企業理念を浸透させるための基本的な手順や、理念が浸透しない主な原因について紹介します。さらに、理念浸透を成功に導くポイントについても紹介しますので、ぜひご覧ください。
また、理念を深く根付かせるためには、従業員が企業のビジョンや価値観を共有する機会を設けることが重要です。その手段の一つとして、多くの企業が周年事業を活用しています。周年事業は、企業にとって、自社の歴史を振り返りつつ、自社を見直し、今後の方向性を示す絶好の機会となります。このタイミングでは、従業員が会社の理念を再認識し一体感を持つことで、理念の浸透を促進することが可能です。
記事の最後には「企業成長の機会を最大化する、「周年事業」の効果と実施ポイントとは?」を掲載しています。あわせてご覧いただき、お役立てください。

理念浸透とは?
企業において理念浸透は重要です。以下では、理念浸透の具体的な内容と、浸透させるべき企業理念について紹介します。
企業の事業目的やミッションを社内に浸透させること
理念浸透とは、企業の事業目的やミッションを社内に広め、理解・定着させることです。また、従業員が企業の事業目的やミッションに共感して、日々の業務に取り組んでいる状態も、理念浸透と呼ばれます。これにより、従業員のエンゲージメントや生産性が向上し、企業の成長にも貢献します。
浸透させるべき企業理念について
企業理念とは、企業が重視する価値観や行動方針を示す言葉です。従業員に一貫した考え方や信念を持たせるために、企業理念を浸透させることはとても重要です。また、企業の存在意義や社会的役割を外部に示すうえでも役立ちます。これにより、消費者や投資家などのステークホルダーからの理解や支持を得ることができ、良好な関係構築も期待できます。
理念浸透を実践するメリット
理念浸透を実践するメリットは多岐にわたります。代表的なメリットとその詳細は、以下の通りです。
MERIT01判断基準や行動方針が定まる
企業が重視する価値観や方向性が明確になることで、従業員の判断基準や行動方針が定まりやすくなります。これにより、業務遂行時の迷いや不安が解消され、従業員全体が一体感を持って業務に取り組めます。
さらに、理念が浸透すると、従業員は企業の一員としての自覚を持つようになります。結果として、コンプライアンスの遵守やパフォーマンスの向上につながることが期待できます。
MERIT02離職率が低下する
企業理念に基づいた働き方の定着は、方向性が明確で働きやすくなるため、結果として、従業員の離職の可能性が低くなります。離職率が低下すると、早期退職による採用コストの削減が可能になり、安定した人員配置が実現できます。
MERIT03従業員のパフォーマンスが向上する
従業員のパフォーマンス向上に対しても、企業理念の浸透は重要な要素です。企業理念が従業員に浸透すると、価値観や行動方針が統一され組織全体に一体感が生まれます。この一体感によって、従業員は自身の役割を理解しやすくなり働く意義や存在価値を実感します。その結果として期待できるのが、モチベーションの向上と自発的な取り組みの促進です。これにより従業員のパフォーマンスが向上します。
業務への積極的な関与が促されると、チームワークの強化や職場環境の改善につながります。さらに、従業員一人ひとりが主体的に行動することで、企業全体の生産性向上や持続的な成長も期待できます。
MERIT04企業のブランドイメージが向上する
理念浸透を外部に向けて実施することで、社会やステークホルダーに対して企業の価値観や行動方針をアピールできます。企業理念に基づく価値観や特徴を取り入れつつ、自社のサービスや商品を紹介することができれば、顧客に対して商品・サービスとともに、自社の魅力を伝えることも可能となります。結果として、ブランドイメージの向上が期待できます。
MERIT05自社の理念に共感した人材を獲得できる
理念浸透が進んでいる企業では、社内外を問わず企業理念が明確に示されています。そのため、外から見ても企業の価値観や行動方針は認識しやすく、結果として、企業理念に共感する人材が集まりやすいといった傾向があります。

理念浸透にはビジョンシェアリングが効果的
理念浸透の手段の一つとして挙げられるのが、ビジョンシェアリング手法です。ビジョンシェアリング手法におけるビジョンの浸透と理解のプロセスは、以下の通りです。
- 認知(Awareness):ビジョンの存在を知る
- 理解(Understanding):ビジョンの意味を把握する、背景や目的を理解する
- 共感(Empathy):ビジョンの重要性を感じる、個人的な関連性を見出す
- 受容(Acceptance):ビジョンを自分のものとして受け入れる、組織の方向性として納得する
- 内在化(Internalization):ビジョンを自分の価値観に取り込む、日常的な思考や行動の指針とする
- 実践(Implementation):ビジョンに基づいた行動を取る
- 伝播(Propagation):他者にビジョンを説明できる、周囲にビジョンの重要性を伝える
- 体現(Embodiment)
理念浸透が上手くいかない主な原因
理念浸透が上手くいかない場合もあります。ここでは、上手くいかない原因と解決策について紹介します。
理念を定めた段階で止まっている
企業理念を作成するだけでは不十分で、改めて従業員に提示をし、理解を促さなければ浸透しません。
そのため、理念を浸透させるための施策を実施することが重要です。この際、理念が定められた背景や理由も併せて伝えることで、一層施策の効果が高まります。
なお、企業の節目に理念浸透を見直したり、再構築したりする企業も少なくありません。
理念の内容が抽象的で理解しづらい
理念を浸透させるために簡潔にしすぎると、かえって曖昧な表現となり理解しづらくなることがあります。理念に対する印象が漠然とすると、従業員の理解が進みません。
理念に沿った行動の習慣化が進んでいない
理念浸透の最終的な目標は、従業員が理念に基づいた行動を習慣化することです。そのためには、具体的な行動指針を示し、理念を意識して行動できる環境を整える必要があります。具体的には、評価制度に理念に関する項目を取り入れる方法や、定期的に浸透施策の成果を確認する方法等が挙げられます。
理念浸透を成功に導くポイント
理念浸透を成功に導くポイントは、いくつかあります。以下は、代表的なポイントとその具体的内容を紹介します。
社内制度を理念浸透の施策に合わせる
理念浸透の促進には、社内制度の見直しが効果的です。例えば、理念に沿った行動を評価する、あるいは、理念実現に向けた取り組みを評価基準に組み込むなどが考えられます。その際、個人の言動をより適切に評価するために、360度評価やリアルタイム評価を導入するのも一つの方法です。
また、理念に沿った行動や評価に沿ったボーナス制度や特別手当を導入するなど、報酬面の制度を整えることで従業員の理念への関心を高めることができます。
企業理念を確認しやすい環境をつくる
企業理念が定まっていても、従業員が理念を確認しづらい環境では十分な効果は期待できません。そのため、従業員が企業理念を容易に確認できるような施策を実施するべきです。具体的には、ブランドブックやカルチャーブックを作成したり、社内ポータルサイトに掲載したりする方法があります。また、企業理念を記載したカードや手帳を配布するのも効果的です。
トップの協力を引き出す
理念を浸透させるためには、経営陣の協力が重要になります。経営陣が理念の重要性を示すことで、従業員の理解を得やすくなるためです。具体的な施策としては、全社集会や社内報で、経営陣自らの言葉で理念を説明することや、理念実現への取り組みを評価し、表彰することなどが挙げられます。
長期的な視点を持って理念浸透に取り組む
理念を定めて浸透するまでには時間がかかります。さらに、浸透したとしても、すぐに効果が表れるとは限りません。そのため、理念浸透には年単位の長期的な視点を持って取り組むことが不可欠です。

理念浸透の具体例
ここでは、理念浸透を実現させるための具体的な施策例を紹介します。
01情報を発信する
企業理念への理解を促すためには、さまざまな方法で情報を発信することが重要です。具体的な情報発信の手段として、以下のような方法が考えられます。
- 紙媒体
- Web
- 動画
- 広告
02評価制度を導入する
評価制度の導入は、理念浸透に関する施策のなかでも特に影響力を持つ手段の一つです。代表的な評価制度として、以下のようなものが挙げられます。
- 表彰制度
- インセンティブ
- 360度評価
03研修やイベントを開催する
研修やイベントを開催することで、集中的に理念浸透を促すことが可能です。以下に、具体的な研修やイベントを紹介します。
- 研修会
- 表彰式
- 講演会
- 全社総会
- キックオフ
- 全社朝会
理念浸透の取組み事例
ここでは、3つの企業の理念浸透の取組み事例について紹介します。
事例01株式会社IHIエスキューブ様
20周年イベントで参加率80%を実現!当日最高潮の盛り上がりを叶えるプロセス
株式会社IHIエスキューブ様は、設立20周年を迎えるにあたり、理念の浸透を目的とした周年イベントを検討していました。従業員の家族も参加できる形式を考えていましたが、従業員が喜ぶ内容が分からないことや、当日の進行・運営への不安などの課題がありました。
そこで、JTBに相談して、コンセプトの設計支援から、社員の参加意欲を高める施策の計画・実施に至るまで、会場の手配のみに留まらない全面的なサポートを依頼しました。準備段階から、毎週のようにWebミーティングを実施し、細部まで入念に計画を進め、周年イベントを無事終了させることができました。その結果、従業員の満足度が高く、理念の浸透にもつながる周年イベントを成功させることができました。
事例02株式会社カシワバラ・コーポレーション様
社員に思いを直接伝えたい~創業70周年記念式典~
株式会社カシワバラ・コーポレーション様は、グループ企業の拡大と従業員数の増加に伴い、従業員の帰属意識の向上が課題となっていました。そこで、グループ全体での一体感を高めるため、ハワイでの周年記念式典を計画・開催しました。
式典では、記念パーティーやイベントを通じて従業員同士の交流を促進し、企業の歴史や功績を振り返る機会としました。また、未来のビジョンを共有することで、組織の結束力を高める場ともなりました。
- 詳しくはこちら
- 社員に思いを直接伝えたい~創業70周年記念式典~
事例03株式会社博報堂ケトル様
“自分たちが大切にすべきもの”を再確認する旅「ケトル合宿」
博報堂ケトル様では、設立時から年に1回、従業員全員で合宿を行っています。近年では、合宿の目的を見直し、職場では得られない情報や体験を通じて、良質なインプットの獲得を目指していました。
相談を受けたJTBが提案したのは、従業員全員を学校の同級生と見立て、沖縄の廃校を舞台に日々の業務の糧となる授業を実施することでした。この施策により、仕事に活かせる多様なインプットを得られる滞在型の合宿が実現しました。
- 詳しくはこちら
- “自分たちが大切にすべきもの”を再確認する旅「ケトル合宿」
まとめ
理念浸透の詳細や、その実践によるメリット、成功に導くためのポイントなどについて紹介しました。理念浸透を成功させるには、組織全体で共通のビジョンを持ち、一体感を高めることが重要です。その効果的な機会や方法として、周年事業を挙げることができます。
周年事業は、企業の歴史を振り返るとともに将来の方向性を示す機会となり、従業員が理念への理解を深めるきっかけになります。
下記の資料では、理念を組織に浸透させるために周年事業をどのように活用すべきか、具体的な手順や成功のポイントを紹介しています。理念浸透や周年事業に取り組もうと考えている企業担当者の方は、ぜひ資料をダウンロードのうえ、ご活用ください。