人間に定期的な健康診断が必要なように、組織にも、課題を発見し改善していくための組織風土の“健康診断”が必要です。未来の予測がつきにくいVUCAの時代には、社員一人ひとりの多様性を重視しながら変化を繰り返し、挑戦・進化を続ける組織風土であることが理想とされています。本記事では、現状を把握する方法や理想的な組織風土をつくるための方法、そして成功事例をご紹介します。
巻末では組織風土変革に関連する「EVP経営」のお役立ち資料もご紹介します。
INDEX
VUCA時代に組織風土改革が求められる理由とは?
VUCA(ブーカ)とは、「Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)」の頭文字を取った造語で、予測が難しく、めまぐるしく変化する社会のことを表す言葉として使われています。
そして組織風土とは、組織全員が共通認識している独自ルールや価値観、考え方のことです。社員の感情や行動、モチベーションやエンゲージメントを左右するため、社内の雰囲気や人材の成長率や定着率に大きな影響を及ぼします。
まさに現代は「VUCA時代」。VUCA時代を生き残るには、社員一人ひとりの多様性を活かしながら変化を繰り返し、挑戦・進化し続ける組織風土が必要です。では、どのような取り組みをすべきなのでしょうか。
社内での懇親会の設定やコミュニケーションイベント、研修も有効な施策の一つですが、その場の一体感は生まれるものの、組織風土を醸成して定着するまでには至らないケースがほとんどです。根本の課題に向き合う場ではないため、再び元の状態に戻ってしまうのです。組織風土は長い年月をかけて培っていくものであり、組織風土変革は容易ではありません。ここからはその方法やポイントをご紹介します。
方法01 組織の現状を把握し課題をあぶり出す
まずは組織の現状を把握する必要があります。社員一人ひとりの行動をよく観察し、社内の課題や問題をあぶり出しましょう。いくつか考えられるケースをご紹介します。
CASE01社員の改革意識が低く変化が生まれにくい
率先して海に飛び込む「ファーストペンギン」のような存在がおらず、改革意識の低い社員が多いと、組織風土改革は進みません。社員の改革意識が低い組織では、ファーストペンギンに続くセカンドペンギンとして、リーダーに賛同し、サポートするフォロワーシップを発揮する人もいないため、変化が生まれにくくなります。
CASE02主体性のない事なかれ主義の社員が多い
自分の意見を言わないので言い争いなどは起こりづらいのですが、挑戦する姿勢がないため、企業の成長にはつながりません。事なかれ主義の社員が多いとチーム全体のモチベーションも下がり、やる気のある特定の社員に頼る体制ができてしまいます。
CASE03社内コミュニケーションが取れず社員が孤立している
仕事はチームで行うことがほとんどです。社員間のコミュニケーションが不足すると職場の空気も悪くなり、生産性の低下や連携ミスなどさまざまな問題が起こります。
CASE04社員のエンゲージメントが低下しており離職率が高い
会社のビジョンや経営方針が社員に浸透しておらず、会社に対する愛着や思い入れが持てない社員が多いと離職率が高まります。職場の風通しが悪いと、社員は「ここで長く働きたい」とは思えません。
組織を見渡して、思い当たることはありましたか? いつの間にか危険な状態に陥っている可能性もあるため、しっかり現状を把握することが大切です。
方法02 特別な体験を共有し、シンプルなコミットメントを実施する
良い組織を作るには、組織を構成するメンバーで特別な体験を共有することが有効です。社員同士の自立を促しながら、失敗・挫折・成功サイクル(仲間意識の芽生えと達成感の醸成)を作り、絆を深めることが強い組織づくりにつながります。研修・イベントなどを実施する場合は、さまざまな体験を通して学び、達成感が生まれるようなプログラムを設定しましょう。そこから得た学びから、普段の業務への「シンプルなコミットメント」を継続していくことが大切です。少しずつ行動変容が生まれ、組織の空気が変わっていきます。
特別体験に役立つソリューション:「7つの習慣®Outdoor」
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実際に、「7つの習慣®Outdoor」を社員研修に導入していただき、組織の雰囲気が目に見えて変わった事例を2つご紹介します。
CASE01「営業社員同士の人間関係が良化」
営業社員同士の人間関係、協力体制が希薄になりがちで、関係を強化したいと考えていたA社。業務で忙しい社員に前向きに研修に参加して欲しいと思ってはいたものの、半日研修などでは得た気づきの継続・習慣化が難しいと感じていました。そこで、宿泊があり参加者同士が長い時間をともに過ごせる上に、日常とはかけ離れたアウトドアでのアクティビティがある「7つの習慣®Outdoor」を実施。会社としては初めての営業社員全員が参加した、1泊2日の研修となりました。
行きの列車ではほとんど会話もなく、個々の行動をしていた社員たち。しかし、研修を終えた帰りの列車では、会話が弾み、別れ際には挨拶するなど、目に見えた変化がありました。「7つの習慣®Outdoor」には、アウトドア体験の中で、チームとして目的を達成するために協力し合う場面が多々あります。アイデアを出し合って体を動かし、夜には焚火を囲み本音で話す。とりあえずやるのではなく、しっかりと考えてから取り組む。2日間の中でも成長がはっきりと見られました。
「組織として業務に持ち帰る習慣」として、月曜の朝は会議室に集合し、仕事の話ではなく、週末何をしたかを話すことを今でも継続しているそうです。一緒に働く人々の知らなかった面も知ることができるようになり、社員同士の関係良化につながりました。
CASE02「行動を定着する力が身についた」
国内有数の製造メーカーB社。本社で成果を残した志の高い若手社員が地方工場の組織運営職として着任した際、工場に流れる重苦しい空気に驚きました。言葉を投げかけても反応が薄く、個々に関係は構築できるものの、チームとなると途端に見えない壁を感じます。会社に対する愛着も感じられず、仕事を楽しむ様子も見られません。
何かを変えなければならないと思った担当者様は、大切なのは行動を定着させる力だと判断し、「7つの習慣®Outdoor」を実施。失敗、挫折、成功のサイクルで進行するため、仲間意識と達成感が芽生え、参加者全員の雰囲気が目に見えて変化。結果、「工場を良くしたい、変えたい」と多くの社員が考えるようになり、「組織として業務に持ち帰る習慣」として、社員同士の挨拶、週明けに10分間会話をすることを、研修を終えた今でも続けています。今後の「目標」と「習慣」を持ち帰り、研修直後から習慣化できたことで、行動を定着する力が身につきました。
方法03 EVPを充実させる
「EVP(Employee Value Proposition)」とは企業が従業員に提供できる価値のこと。EVPが充実している企業では、一人ひとりの社員が生き生きと働いています。組織風土の変革のスタートとして、EVP経営に力を入れることもおすすめです。
まとめ 定期的に組織の健康診断を!
未来の予測がつきにくいVUCAの時代、理想とされるのは社員一人ひとりの多様性を重視しながら変化を繰り返し、挑戦・進化を続ける組織風土です。ここでは現状を把握する方法、理想的な組織風土をつくるための方法、そしてJTBが提供するソリューションと成功事例をご紹介しました。まずは、課題を発見し改善していくための組織の健康診断から、貴社でも始めてみませんか。