昨今では、さまざまな企業が人材育成に注力しています。しかしながら、具体的にどのような方法で育成すればよいのか、効果的かつ効率的な育成方法は何かなど、わからないことも多いでしょう。この記事では、人材育成がなぜ必要なのかをはじめ、計画立案の際のポイントや具体例などを紹介します。また、記事の最後にはお役立ち資料「EVP経営のすすめ ~人的資本経営 何から始める?~」を掲載しています。ぜひ、併せてご覧ください。

人材育成とは
人材育成とは、自社に対して貢献できる人材を育成することです。育成内容はそれぞれの企業によって異なりますが、一般的には職種や役職、入社した年度などの条件で対象者をカテゴリ分けして、一律のスキルを習得させるといった流れが基本となります。似た言葉に人材開発がありますが、人材育成の場合は達成すべきゴールを同じラインに設けるのに対し、人材開発は社員個人が目標を決定するため、達成すべきゴールが異なるという違いがあります。
人材育成が必要な理由
昨今では人材育成に力を入れる企業が増えています。なぜ、人材育成が必要なのでしょうか。ここでは、人材育成が求められる理由を紹介します。
労働人口が減少しているため
日本では少子高齢化などの影響による人口減から、労働人口の減少が深刻化しています。そのため、従来の業務のやり方だけでは作業効率が低下して、営業成績に悪影響が出る恐れがあります。そこで、人材育成による従業員の一層のスキルアップにより、少ない人員でも業務を効率的に進めることが求められています。
優秀な人材を確保するため
従来日本では終身雇用制が一般的でした。しかし、現在では人材の流動化が進んでおり、キャリアアップ目的の転職も一般的になっています。優秀な人材が離職して他の企業に流れてしまうことは、企業にとっては大きな痛手です。従業員がキャリアデザインやスキルアップを達成しやすい環境を整えることは、優秀な人材の確保につながるでしょう。
企業を存続させるため
企業を安定的に成長させて継続させるためには、人材育成が欠かせません。特に中小企業では、後継者が見つからずに、そのまま廃業を選択しなければいけない状況に追い込まれることも珍しくありません。社会的影響力が大きい上場企業においては、後継者育成が義務づけられるほど、人材育成の重要性が高まっています。
人材育成の計画の立て方
人材育成を効率的かつ効果的に行うためには計画をしっかり立てることが重要です。ここでは、人材育成の計画の立て方を紹介します。
自社の課題を見つける
現状を分析し、自社の課題を明確にすると、人材育成についての指導の指針や目的などをより設定しやすくなります。また、自社が必要とする人物像を明確にすることも大切です。これにより、適切な育成方針を立てやすくなります。
企業が抱える課題によっては人事の観点からのアプローチが難しいケースもあるでしょう。課題を分析、細分化することで自社の課題を把握することは大切です。また、指導する対象によって、課題が異なることにも注意が必要です。
自社の目標や戦略を明確にする
課題を把握した後は、自社の目標や戦略を明確化させます。この際、実現不可能なレベルの高すぎる目標を立てることは厳禁です。目標が高すぎたり道のりが遠すぎたりすると、従業員のモチベーション低下につながる恐れがあります。そのため、現実的かつ実現可能な目標と戦略を設定することが重要です。
適切な課題の解決方法を検討する
人材育成の目標が明確になった後は、課題の解決方法を検討します。課題の内容によって適切な解決策は異なるため、課題に合った方法が何かをしっかりと検討することが大切です。自社にある程度のノウハウがある場合には、OJTや新人研修なども有効です。特定の専門家からの指導を受けたい場合、e-ラーニングの活用を検討します。

人材育成の3つの手法
人材育成には大きく分けて、「OJT」「Off‐JT」「SD(Self Development/自己啓発)」の3つの手法があります。ここでは、各手法について紹介します。
01OJT(On the Job Training)
OJTとは、職場の上司や先輩から指導を受けるなど、業務を行いながら、新人従業員等が学ぶという人材育成方法です。多くの企業で採用されている一般的な手法であり、実務経験を通して業務の内容や知識、スキルなどを学べます。業務のなかで指導を行うため、企業実績の貢献にもつながります。また、対象となる従業員のレベルに応じて指導内容を柔軟に変更することも可能です。
02Off‐JT(Off the Job Training)
Off‐JTとは実務以外の場、たとえば研修などで従業員にスキルや知識を身につけさせる育成手法です。指導者によって指導内容が異なるといったことがなく、体系的に業務のノウハウを学べます。研修を受ける従業員同士で交流が生まれて、部署などを超えた横のつながりが構築できる可能性もあります。指導内容は新人研修からマネジメントまでさまざまです。
03SD(Self Development/自己啓発)
SDとは、従業員個人が自発的に業務に役立つスキルや必要な知識を学ぶことです。企業から特定のスキルやノウハウを押しつけられるのではなく、自発的に学ぶため、目的意識を持って臨めます。勉強会を開催して従業員のモチベーションを向上させる企業もあります。ただし、個人の負担が大きいため、企業から教材購入の補助金を出すなどサポートをすることが必要な場合もあります。
人材育成の成功例
ここでは、人材育成の成功例として、フォルシア株式会社様と株式会社バンダイ様の2つの事例を紹介します。
CASE01フォルシア株式会社様の事例
フォルシア株式会社様は、検索エンジンのシステム開発・サービス提供並びに、コンサルティングを行っている会社です。同社では、従業員同士の人間関係や協力体制が希薄だという課題があったため、外部研修を導入しました。これにより、従業員個々のスキルはもちろん、組織としての結束を高めることに成功しています。
CASE02株式会社バンダイ様の事例
株式会社バンダイ様は、子ども向け玩具や模型などの開発や製造、販売などを行っている企業です。同社では、欧米の若手社員を対象として、日本における自社のビジネス規模や欧米市場での可能性についての理解を深めてもらうため、訪日研修を実施しました。これにより、参加者同士や日本のグループ会社とのコミュニケーション活性化を実現することができました。
人材育成に関するよくある質問
ここでは、人材育成に関するよくある質問とその回答をご紹介します。人材育成に関する各種疑問や課題解決にお役立てください。
若手従業員の人材育成において大切なことは?
若手従業員の人材育成については、柔軟なコミュニケーションとモチベーション管理が重要です。若手社員は、仕事に対するモチベーションが低下すると離職につながりかねません。そのため、従業員それぞれの考え方の違いや特性などを考慮して、適切な方法でコミュニケーションを図る必要があります。
人材育成が計画通りに進まないときはどうすればよい?
人材育成の計画を立てたとしても、計画通りに進むとは限りません。計画通りに進まない要因は、業務の忙しさやコミュニケーション不足などさまざまです。そもそも、人材育成に力を入れるための環境構築ができていない可能性もあります。
また、人材育成の取組みにおいては、従業員の成長過程を記録しながら進行に問題がないかを確認することが大切です。場合によっては計画を変更するなど、柔軟な対応が必要になることもあります。その際にはコミュニケーションを増やす、企業としてのビジョンや方向性を定期的に共有するなどの工夫が求められます。
まとめ
人材育成とは、自社に貢献できる人材を育成することです。人材育成の方法はOJTやOff‐JT、SDなどがありますが、自社の現状に合う育成方法を選択することが大切です。また、育成する対象によっても適した育成方法は異なります。人材育成の計画を立てたうえで、状況に応じて柔軟に変更しながら教育を行っていくとよいでしょう。
自社だけで行うのではなく、外部に委託するのもおすすめです。企業によっては、人材育成のための環境が整っていなかったり、育成のノウハウが蓄積されていなかったりするなど、内部だけでは従業員の教育が難しい場合や、教育のための人材確保が困難なケースもあるでしょう。専門知識や難易度の高いシステムの習得が目的の場合なども含めて、外部委託を検討するのも有効な手段です。外部委託は、社外セミナーや講師派遣などさまざまな方法があるため、自社に合った方法を選んで研修を行ってみてはいかがでしょうか。