社員総会とは、従業員が集まり、会社のビジョンや戦略を共有する会議のことです。本記事では、社員総会の目的やその内容について紹介します。また、社員総会の開催に向けた準備や成功させるためのポイントも紹介します。
最後に「目的主導のイベント設計と参加者エンゲージメントの深化とは?~JTB主催キックオフイベント事例に基づく社内イベントガイド~」も紹介していますので、あわせてご覧ください。

そもそも社員総会とは
社員総会は、会社と従業員が共に成長するための情報共有とコミュニケーションの場です。会社のビジョンや今後の方針を共有し、従業員の理解を深めることで、その後の行動変容につなげることができます。
また、同じ時間と空間を共有することで、従業員の間に一体感が生まれ、結束力を高めることができます。社員総会は、金銭的にも時間的にもコストがかかりますが、それを自社の成長や成果を生み出すための投資と捉えることが大切です。
社員総会を実施する目的
社員総会を実施する目的は多岐にわたります。以下は、主な目的とその詳細です。
インナーブランディングを強化する
社員総会の目的のひとつは、企業理念やビジョン、事業戦略を従業員に浸透させ、インナーブランディングを強化することです。社員総会では、経営層が自社のビジョンなどを直接伝え、従業員の理解を深めることを最優先する企業も少なくありません。
会社のビジョンが適切に共有されると、従業員は自社に対して良好なイメージを持ちやすくなります。その結果、日々の業務にも前向きに取り組めるようになり、自社の商品やサービスの向上につながります。このような状況が生まれることから、業績の向上にもつながると考えられています。
従業員同士の交流を活性化させる
普段、従業員は自身の業務に追われがちです。そのため、直接関係のない部署同士では、従業員同士の交流も少ないことが課題として挙げられます。社員総会では、同じ時間と空間を共有することで、お互いの顔が見え、社内の一体感を高めることができるメリットがあります。
従業員同士の交流が活発になれば、生産性の向上や業務改善といった効果が期待できます。そのため、従業員が単に座っているだけの状況にならないよう、結束力を高めるプログラムを取り入れるなど、工夫することが重要です。
従業員を労う
従業員一人ひとりに対し、自身の働きが会社に大きく影響していることを認識してもらうことも、社員総会の目的のひとつです。各従業員が自分の業務が必要とされていると感じることはとても重要です。なぜなら、それがモチベーションの向上や帰属意識の強化につながるからです。
また、社員総会では、企業から従業員への感謝を伝えることも重要です。例えば、社長や役員がプレゼンテーションを行い、日々の業務への感謝を伝えることや、表彰制度を設けて従業員を表彰することが挙げられます。

社員総会の実施に適した時期とは
社員総会の開催時期は企業によって異なります。下期が始まる10月頃に開催することが多いものの、新年度の4月や年末の12月に開催する企業も少なくありません。いずれの場合も、社員総会には一定の準備が必要です。そのため、繁忙期を避けた時期の開催が一般的です。
また、社員総会で業績の振り返りを行う場合は、人事評価や決算が完了した時期の開催がおすすめです。なお、開催回数については、通常は年に1回ですが、半期ごとに開催する企業も少なくありません。
社員総会の内容・プログラムを確認
社員総会を開催する前に、内容やプログラムを確認する必要があります。代表的な項目とその詳細は、以下の通りです。
代表からの挨拶
代表の挨拶では、企業の代表が従業員に向けて、労いの言葉や想いを伝えます。代表の言葉を直接届ける機会は多くないため、貴重な場となります。従業員に感謝を伝えることで、モチベーションを高めるチャンスにもなります。挨拶の際は、身だしなみを整え、ハキハキと話すことを意識しましょう。
業績の報告
社員総会の内容やプログラムのひとつに、企業全体の状況を把握できる業績報告があります。全体の収支をはじめ、部門や部署ごとの業務報告も必要とされます。この際、従業員に当事者意識を持ってもらうため、詳細情報を共有することが望ましいといえます。業績報告の具体例は以下の通りです。
- 自社が社会にどのように貢献しているか
- 自分の所属部署が社内でどのような役割を担っているか
- 他部署と比較して自身の所属部署の業績はどのような状況か
また、業績報告に用いる資料は、視覚的にわかりやすいものを使用することが推奨されます。
経営方針・戦略の共有
社員総会では、すでに周知されている経営方針や戦略も含め、改めて内容を伝え、社内全体の意思統一を図ります。特に、新たに経営理念やビジョンを策定したり、戦略を見直したりするタイミングでは、大きな効果が期待できます。
経営方針や戦略を共有する際は、ゴールを提示するだけでなく、その目的や達成手段も併せて示すことが効果的です。いずれにしても、経営層自らの言葉で経営方針や戦略を従業員に伝えることが重要といえます。
映像コンテンツ
社員総会で流す映像コンテンツは、同じ空間で全従業員が同時に視聴できるため、メッセージを伝えるのに有効な手法です。例えば、自社の歴史を振り返る映像や事業内容をまとめた映像は、自分の所属部署以外の業務を知る良い機会となります。
また、従業員の日頃の活躍を紹介する映像にすれば、より身近に感じられ、モチベーションの向上にもつながります。さらに、社員総会で使用した映像は、他の場面でも活用でき、副次的な効果を得ることも可能です。例えば、採用活動での活用や社外向けのアピールなどが挙げられます。
表彰式
社員総会では、成績優秀者や優秀な部署・チーム、永年勤続者を表彰するケースもよく見られます。これらの取り組みは、従業員のモチベーション向上につながるだけでなく、互いに切磋琢磨するきっかけにもなります。
表彰者の選定については、評価制度に基づいた選定基準を明確にしておくことが重要です。また、表彰式を実施する際は十分な時間を確保し、流れ作業のようにならないよう注意しましょう。
歓談・パーティー
方針発表や表彰式の後には、従業員間の親睦を深める機会として、落ち着いた雰囲気の中で食事や会話を楽しむ時間を設けます。これは、オンライン上でコミュニケーションを取っていた相手や、異なる部署で働く同期との再会の場としても機能し、対面コミュニケーションを促進するきっかけになります。
また、普段接点のない役員など、異なる階層の人と対話の場を創出することも可能です。こうした交流を通じて、従業員同士の絆が深まり、会社への帰属意識が醸成されるなど、多岐にわたる好ましい効果が期待できます。
ゲームコンテンツ
ゲームコンテンツは、従業員同士の結束を強める効果が期待できます。定番のものとしては、自社に関するクイズやビンゴなどが挙げられます。そのほかにも、コンセンサスゲームや共通点探しゲームなど、従業員同士の交流を深める効果が期待できるものもあります。
また、普段接点の少ない従業員同士でチームを組むことで、コミュニケーションを促す良い機会になります。このように、社員総会で生まれた交流が、総会終了後の日常業務にも良い影響を与えるケースが少なくありません。

オンライン社員総会という選択肢もある
オンライン開催は参加人数に制限がなく、従業員の移動にかかる時間や費用も不要なため、効率的な方法のひとつです。また、大規模な会場費がかからないのもメリットです。「いいね」や「拍手」といったリアクション機能を活用すれば、従業員の主体的な参加を促すことができます。しかしその反面、従業員同士が直接対面で交流する機会としての価値は薄れてしまいます。
このように対面開催とオンライン開催には、それぞれメリットや特徴があります。自社の社員総会の目的に照らし合わせて、どちらの形式が適しているか検討しましょう。
社員総会の開催に向けた準備
社員総会の開催に向けた準備は多岐にわたります。ここからは、代表的な準備とその詳細を紹介します。
01運営体制を整える
社員総会の運営体制として、担当部署を決定するか、実行委員会を編成します。役員や総務部門が主導するケースもありますが、あえて各部署から従業員を選出して実行委員を構成する企業もあります。
この方法は、多くの従業員に当事者意識を持ってもらえることが利点です。また、さまざまな立場の意見を集めやすいというメリットもあり、組織全体の活性化に貢献します。準備を進める際は、まず中核となるメンバーを選出し、その後、慎重にメンバーを集めていくのが望ましい方法です。
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02目的・ゴールを設定し、企画を検討する
目的やゴールの設定は、社員総会の開催において重要な要素です。社員総会が従業員にとってどのような場になるべきかを考えることで、より効果的な企画を立案できます。また、従業員にどのような思いを抱いてもらいたいのかを明確にすることも大切です。
目的やゴールが決まったら、それらに沿った企画を検討します。「誰に、何を、どのように」という3つの観点から考えると、企画案がより具体的になります。例えば、成績優秀者を称えたい場合は、各事業や部門に応じた複数の部門にわたる表彰式の開催が挙げられます。
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03会場を準備する
開催日や参加人数、実施するプログラムの概要が固まった段階で、適切な会場の選定を進めます。社員総会の会場は、参加者である従業員にとって特別感がありつつ、利便性の高い場所を選ぶことが望ましいでしょう。
具体的には、ホテルの宴会場や貸し会議室などが挙げられます。また、一部の結婚式場では、社員総会向けに会場を貸し出している場合もあります。さらに、会場までのアクセスの良さや、必要な設備の有無なども確認します。いずれにしても、実際に現地へ赴き、会場の担当者と詳細を確認することで、より安心して準備を進められます。
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04開催案内を送付する
社員総会の内容や開催日が決まったら、従業員に開催案内を送付します。この際、社員総会の開催目的や所要時間なども伝えましょう。開催案内の手段としては、社内メールや社内報、掲示板への掲載などが挙げられます。また、本格的な招待状を用意し、特別感を演出するのも効果的です。
05備品・機材を準備する
実施するプログラムに必要な備品や機材の準備も欠かせません。この際、マニュアルや台本を参考にして必要な備品や機材をリストアップすると、会場側との共有がスムーズに進みます。
オンラインで社員総会を実施する場合は、配信機材の準備や使用する配信システムの確認も必要です。機材やサービスについては、事前に使用方法を確認します。また、トラブルが発生した際の対処法や復旧手順も、あらかじめ把握しておきましょう。
06アンケート調査を行う
社員総会まで時間がある場合は、事前アンケートの実施もおすすめです。社員総会への期待や希望するレクリエーションの内容、また課題として感じている点などを事前に把握することで、プログラムを検討する際の参考になります。なお、アンケート実施の際は、匿名回答にすると効果的です。匿名にすることで、率直な意見を得やすくなるためです。
07イベントレポートをまとめる
社員総会では、次回以降の参考となるように記録を残すことが重要です。準備段階の打ち合わせの議事録や、当日の様子を写真やテキストでまとめたイベントレポートなどを、記録として残します。参加者にアンケートを取るのも有効な手段です。
また、イベントレポートは参加者の当事者意識を高める効果もあります。例えば、企業の公式サイトやイントラネット、社内報に掲載することで、より多くの人に共有できます。さらに、公式サイトに写真を掲載することは、社外へのアピールとしても有効です。その結果、企業理解の促進につながり、人材採用への貢献も期待できます。

社員総会を成功させるためには?
社員総会を成功させるためには、いくつかポイントがあります。以下は、具体的なポイントとその詳細です。
一体感のあるプログラムを検討する
社員総会では、従業員全員が楽しめるプログラムを取り入れる等、一体感を高める必要があります。例えば、さまざまな種類のゲームや競技を実施し、表彰を行うことが挙げられます。全従業員が共通のゴールを目指し競い合うプログラムに参加することで、一体感の醸成が期待できます。
なお、開催時期に応じてプログラムの方針を決めることも重要です。期首であれば、今後の意欲を高められる内容が効果的です。一方、期末であれば、リラックスできるような内容を検討してください。
感謝の気持ちを表す
従業員に感謝の気持ちが伝わるよう工夫することも、重要なポイントです。企業の発展は、日々業務に取り組む従業員の存在なしには実現し得ません。
そのため、社員総会では、一部の従業員だけではなく、全員に対して感謝の気持ちを伝えるようにしましょう。表彰式を実施する場合もありますが、すべての従業員が感謝の気持ちを受け取れるように工夫することで、より一層モチベーションを高めることにつながります。
オンラインの場合は視聴環境に配慮する
社員総会をハイブリッドまたはオンラインで開催する場合は、対象者の視聴環境を事前に確認しておくことが大切です。例えば、視聴に使用するデバイスやWi-Fi環境のチェックがあります。環境が整わず参加が難しい従業員には、適切な対応を行うことが求められます。
具体的な対策として、通信デバイスやWi-Fi機器の貸与が挙げられます。また、必要に応じて技術サポートを提供し、スムーズにオンライン参加できる環境を整える方法もおすすめです。
後日のフォローアップを徹底する
社員総会に参加できなかった従業員がいる場合は、フォローアップを徹底する必要があります。例えば、経営者が会社全体の方針を共有する場に参加できなかった従業員に対して、別途説明の機会を設ける等の取り組みが考えられます。また、説明の機会を設けることが難しい場合は、文章や資料、動画などを用意し、後日配信する方法もあります。
社員総会の成功事例
ここでは、社員総会の成功事例を3つ紹介します。
01 社員一人ひとりに未来への想いと熱意を届けたい 「AKKODiS KICK OFF2023」で踏み出した新たな一歩
AKKODiSコンサルティング株式会社が、社名変更と経営ビジョンの刷新に伴い、全社キックオフイベントを実施した事例です。「AKKODiS KICKOFF 2023」と銘打たれたこのイベントの目的は、新しい経営ビジョンを社員に浸透させることです。
しかし、オンライン業務が中心であることや、経営ビジョンの共有不足といった課題がありました。準備期間は約2か月半と限られていましたが、パートナー企業の協力を得ることで、スムーズな運営を実現しました。
02 社員に思いを直接伝えたい ~創業70周年記念式典~
株式会社カシワバラ・コーポレーションの創業70周年記念式典の事例です。このイベントは、従業員およびその家族への感謝を伝えるとともに、グループ全体のビジョン共有と一体感の醸成を目的としています。
同社は、グループ企業や従業員数の増加に伴い、全社員でのビジョン共有に課題を抱えていました。そこで「The One」というテーマを掲げ、社員やその家族を対象に、ハワイで式典とパーティーを開催しました。実際に、式典後の屋外パーティーでは、家族も参加できる交流プログラムを実施しています。さらに、社長がビジョンを直接伝えることで社員の一体感が高まり、社内の士気向上につながりました。
- 詳細はこちら
- 社員に思いを直接伝えたい~創業70周年記念式典~
03 目的主導のイベント設計と参加者エンゲージメントの深化とは? JTB主催キックオフイベント事例に基づく社内イベントガイド
JTBビジネスソリューション事業本部が主催した「All BS Kick-off Meeting & BS-AWARD 2023」の事例です。参加者のエンゲージメント向上や、外部環境の変化の再認識による社員同士の結束、コミュニケーションの強化などを主な目的として開催しました。イベントでは座席配置やサプライズ表彰などで工夫を行っています。
また、参加者からのポジティブなフィードバックを通じて、次回以降の改善点も明確になりました。イベント設計においては、楽しさや参加者目線、エンゲージメントを重視することが重要だと再認識できました。
まとめ
社員総会は、インナーブランディングの強化や従業員同士の交流による組織活性化に役立ちます。また、社員総会のプログラムは多岐にわたりますが、自社に適した内容を設定することが重要です。例えば、代表の挨拶や表彰式の実施、映像コンテンツやゲームコンテンツの導入などが挙げられます。
社員総会をスムーズに開催するためには、事前準備が欠かせません。具体的には、運営体制を整えたり、目的・ゴールを明確にしたりすることが効果的です。さらに、社員総会を成功させるためには、いくつかのポイントを意識することが重要です。
代表的なポイントとして、一体感のあるプログラムの用意や、従業員への感謝の気持ちを伝えることが挙げられます。ぜひ、社員総会を実施する際には、成功事例を参考にしてみてください。