新入社員研修は、企業だけではなく、社会人として第一歩を踏み出す新入社員にとっても重要な機会です。この記事では、適切で効果的な新入社員研修を実施したい人事担当者向けに、新入社員研修を成功に導く6つのポイントを紹介します。新入社員研修の目的、必要な要素、手法ごとの特徴などを紹介していますので、ぜひご覧ください。

新入社員研修を実施する3つの目的
新入社員研修の目的を正しく理解することは、効果的な研修実施のために欠かせません。新入社員研修を実施する3つの目的を紹介します。
自社事業を理解してもらう
新入社員を戦力として育成するためには、自社の企業理念や事業を深く理解してもらう必要があります。自社の事業全体への理解を深めてもらうことで、新入社員に組織の一員としての自覚が芽生え、目的意識を持って業務に取り組めるようになります。
社会人としてのマナーやスキルを身につけさせる
基本的なビジネスマナーの習得も、新入社員研修の目的です。特に、正しい敬語の使い方やビジネスメールの作成方法、電話応対の基本など、日常的に必要となるスキルについて、実践的な演習を通じて確実に身につけてもらうことがポイントです。
ビジネスの現場では、上司や同僚、取引先などさまざまな関係者と関わる機会があります。新入社員が円滑に業務に対応するためには、マナーやスキルを早期に身につけてもらう必要があります。
実務に必要なスキルを身につけさせる
実践的な業務スキルの習得は、新入社員の不安を軽減し、円滑に実務を開始してもらうためのポイントです。業務で頻繁に使用するパソコン関連のスキルや、職場での報告・連絡・相談の具体的な方法、チームでの協働に必要なコミュニケーションスキルなどを身につけることが求められます。スキルを身につけることで自信が生まれると、実務における心理的負担の軽減も期待できます。
新入社員研修に必要な7つの要素
効果的な新入社員研修を実施するためには、いくつかの要素を押さえる必要があります。以下では、研修に組み込みたい要素を紹介します。
01企業理念や事業に対する理解
新入社員研修では、企業理念への理解を深めるとともに、会社の歴史や成り立ち、ビジネスモデル、商材やノウハウについて体系的に学ぶ機会を提供する必要があります。新入社員が企業理念や事業について深く理解することは、既存従業員と共通の価値観や目的を持って業務を進めていくうえで不可欠です。
02社会人としてのマインドセット
新入社員研修では、社会人としてのマインドセットを確立してもらう必要があります。近年の人材不足を背景に、新入社員の早期戦力化は企業にとって重要な課題であるためです。社会人としてのマインドセットができると、新入社員は主体性を持って仕事に取り組み、戦力として力を発揮できるようになります。
03基本となるビジネスマナー
基本となるビジネスマナーは、業界や職種を問わず、すべての社会人に求められる必須スキルです。新入社員研修で身につけさせたいビジネスマナーを以下に示します。
- TPOを考慮した身だしなみの整え方(服装・髪型・清潔感の維持)
- 好印象を与える挨拶や立ち振る舞い
- 名刺交換のやり方
- 来客および電話対応の基本
- 正しい敬語や自然な言葉遣い
- ビジネス文書やビジネスメールの作成方法(メールの件名・本文の書き方)
04コミュニケーションスキル
「報告・連絡・相談」を中心としたコミュニケーションは、業務の円滑な遂行に不可欠です。適切なタイミングで必要な情報を共有できると、チームのパフォーマンスが向上し、問題の早期発見・解決にもつながります。また、近年は、自身のコミュニケーションスキルを不安視する新入社員も珍しくありません。基本的なコミュニケーションスキルを身につけてもらう目的には、不安の軽減も含まれています。
05コンプライアンス
本来、コンプライアンスは法令遵守を意味します。しかし、人材育成の現場では、企業倫理、就業規則などを守ることもコンプライアンスに含まれます。新入社員研修で習得すべきコンプライアンス関連の内容は以下のとおりです。
- 各種ハラスメントの定義と防止策
- 業務に関連する法令の基礎知識
- 社内規定・就業規則のポイント
- SNS利用時の注意点と情報発信の留意事項
- 情報漏洩を防ぐためのセキュリティ対策
06PCスキル
ビジネスにおけるPCスキルは、業務効率を大きく左右する重要な要素です。新入社員研修では、ブラインドタッチの習得から、Word・Excel・PowerPointなどの操作方法、作業効率を高めるショートカットキーの活用まで、実践的なスキルを身につけてもらう必要があります。Googleドキュメントやスプレッドシート、スライドなどのツールについても、必要に応じて指導することが望まれます。
07ロジカルシンキング(論理的思考力)
ロジカルシンキングとは、物事を論理的に整理し、筋道を立てて考えることです。新入社員研修では、情報の整理方法や分析手法、思考プロセスを実践的な演習を通じて身につけてもらう必要があります。また、考えを分かりやすく伝える論理的な話し方も併せて強化することで、業務の生産性向上が期待できます。
新入社員研修の設計手順4ステップ
新入社員研修の成功は、入念な準備にかかっています。以下では、研修を設計するために必要な4つのステップを紹介します。
STEP01関係部署にヒアリングをする
効果的な新入社員研修を設計するためには、配属先となる各部署へのヒアリングが重要です。現場で求められる具体的なスキルや知識、部署特有の課題や期待値を把握することで、より実践的な研修プログラムの設計が可能になるためです。
業務の特性は部署によって異なるため、丁寧なヒアリングによる新入社員に必要なスキルの明確化が求められます。
STEP02目標を設定する
明確な目標設定も、効果的な新入社員研修にとって不可欠です。段階的な目標設定の手順を以下に示しました。
- 組織全体の目標を踏まえる
- 組織全体の目標を達成するために必要な人材像を具体化する
- 新入社員に求められる知識やスキル、態度を設定する
STEP03研修内容を企画する
目標設定を終えたら、研修内容にふさわしいプログラムや手法を選定し、詳細なカリキュラムを作成します。
以下にソリューションの一部を紹介します。
「7つの習慣®Outdoor」は、自立性とチームワークの本質を体感的に学び、成功の原則に照らして理解を深めるプログラムです。フォローアップ研修として実施することで、同期の絆を深め、早期離職防止に効果を発揮します。
「JTBアグリワーケーション®研修」は、農作業という共同体験を通じて新入社員間のコミュニケーションを活性化させ、チームの結束力を高めるプログラムです。プログラムで得られる達成感は、仕事の意義を考えてもらうきっかけとなります。
「復興ワーケーション」は、地域課題の解決に取り組む実践型プログラムとして、同期や地域との絆構築、新たな視点での課題解決力向上に貢献します。
STEP04スケジュールを調整する
新入社員研修の目標やプログラム、カリキュラムが決まったら、配属日を起点として逆算し、必要なスキルが身につく適切な研修期間を設定します。身につけてもらいたいスキルの量や難易度に応じて、十分な学習時間と実践機会を確保することが重要です。詰め込みすぎは逆効果となるため、新入社員の理解度や習熟度を考慮しながら、柔軟に日程を組み立てる必要があります。
新入社員研修の手法と特徴
新入社員研修では、目的や内容に適した手法の選択が求められます。以下では、それぞれの手法の特徴を紹介します。
グループワーク
グループワークは、与えられたテーマについてチームで議論し、解決策を導き出す過程で実務に直結するスキルを養う研修手法です。多くの業務はチームでの協働を必要とします。そのため、グループワークを採用すると、業務を遂行するためのスキルを習得・向上させられます。
ケーススタディ
ケーススタディは、実際の業務シーンを想定した事例を用いて学習を進める研修手法です。電話応対や名刺交換などの基本的なビジネスマナーから、クレーム対応やヒューマンエラーの予防まで、幅広いシチュエーションを過去の具体的な事例をもとにした疑似体験が可能となります。
ロールプレイング
ロールプレイングは、実際の業務シーンを想定して参加者が役割を演じることで、実践的なスキルを身につけてもらう研修手法です。例えば、ある参加者を顧客役に、もう1人に営業担当者役を演じてもらうと、リアルな業務体験が可能になります。
流れとしては、熟練した先輩従業員のロールプレイングを観察させた後に、実践させフィードバックを伝えるという段取りが効果的です。
eラーニング
eラーニングは、テレワークの普及を背景に、新入社員研修でも積極的に活用されている手法です。パソコンやタブレットを使用して場所を問わず学習できるeラーニングならば、柔軟に研修を開催できます。また、講師の人件費や会場費などのコスト削減効果も期待できます。
OJT
OJT(On-the-Job Training)は、業務現場での先輩従業員からの指導を通じて、実践的なスキルを身につけてもらう研修手法です。多くの企業が新入社員研修にOJTを取り入れています。
一方、OFF-JT(Off-the-Job Training)は、業務から離れた環境で学ぶ研修手法です。基本的な知識やビジネススキルを体系的に学んでもらうのに適しています。

新入社員研修を成功させる6つのポイント
より効果的な新入社員研修を実現するポイントを紹介します。以下の6つのポイントを意識することで、研修の質と効果を高められます。
POINT01アウトプットで定着させる
新入社員研修で得た知識やスキルを確実に定着させるには、アウトプットの機会を意図的に設けることが重要です。インプットだけでは受け身の学習となり、実践的な理解が深まりにくい傾向があるためです。失敗や試行錯誤を経験させながら、主体的に学びを深められる環境を整える必要があります。
POINT02カリキュラムの内容を絞る
新入社員研修のカリキュラムを作成する際は、内容の厳選が必要です。配属までの限られた期間で、すべての知識やスキルを網羅しようとすると、かえって学習効果が低下してしまう場合があります。各部署へのヒアリング結果を基に、配属後すぐに必要となる最低限の知識やスキルを見極めたうえで、優先順位が明確なカリキュラムの作成が求められます。
POINT03研修後のフォローをする
新入社員研修後の継続的なフォローは、成長を促進する重要な機会です。継続的にフォローする方法として、定期的なフィードバックが挙げられます。改善が必要な点だけではなく、成長が見られた部分や優れた取り組みについても具体的に言及すると、モチベーション向上につながります。また、フィードバックを定期的に実施するうちに、新入社員にPDCAサイクルが自然に身につくと期待できます。
POINT04新入社員のレベルに合わせた内容にする
効果的な研修を実現するためには、新入社員の現状のスキルレベルを正確に把握しておく必要があります。入社時の試験や面接結果に加え、事前アンケートを実施すると、知識やスキルの習得状況、得意・不得意分野を詳しく確認可能です。新入社員のレベルに適した難易度でカリキュラムを設計すると、モチベーションを保ちながら着実な成長を促せます。
POINT05研修の目的を説明する
新入社員研修の目的を明確に説明すると、研修を効果的に進められます。「なぜこの内容を学ぶ必要があるのか」「実務でどのように活かせるのか」といった具体的な意義を理解してもらうと、新入社員の学習意欲が高まり、より深い理解につながることが期待できます。
POINT06社内の人脈を作る機会を設ける
研修期間は、新入社員が社内で人脈を構築する重要な機会です。同期同士のグループワークや、先輩従業員との交流を通じて、自然な形で関係性を深められるためです。相談しやすい関係性を早期に構築できると、配属後の業務での不安や課題を気軽に共有でき、スムーズな職場適応につながります。
新入社員研修を内製するメリット・デメリット
新入社員研修を自社で実施するか、外部に委託するかは重要な判断となります。以下では、内製のメリット・デメリットと事例を紹介します。
新入社員研修を内製するメリット
新入社員研修を内製する主なメリットは、以下のとおりです。
- 費用を抑えられる
- 講師役を務める従業員のスキルアップにつながる
- 自社に合った研修を実施できる
新入社員研修を内製すると、外部講師への依頼費用が不要となるためコストを削減できます。また、講師を務める従業員にとって、研修内容の構成や人前でのプレゼンテーションは、自身のスキルを高める機会になります。
さらに、企業理念や経営方針、業務特有のノウハウなど、自社ならではの要素を柔軟に盛り込むことで、より実践的な研修を実現可能です。
新入社員研修を内製するデメリット
新入社員研修を内製する主なデメリットは、以下のとおりです。
- 従業員に負担がかかる可能性がある
- 研修の質を一定に保つことが難しい
新入社員研修を内製すると、従業員に負担がかかる結果、コア業務に影響する可能性があります。また、研修経験の少ない従業員が講師を務めるため、一定の研修品質を維持するには工夫と準備が必要です。
内製の負担が大きい場合は、外部委託の活用がおすすめです。外部委託を活用すると、社内リソースを本来の業務に集中させながら、質の高い研修を実施できます。
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まとめ
新入社員研修の目的は、自社に対する理解を深め、社会人全般に必要なマナーやスキルと、業務に必要なスキルを身につけてもらうことです。効果的な新入社員研修を実施するポイントには、アウトプットによる知識やスキルの定着や、研修後の適切なフォロー、研修をする目的の事前説明などが挙げられます。自社のみでの新入社員研修の計画・実施が難しい場合は、外部委託の活用がおすすめです。
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