海外研修は、海外で社員にさまざまなことを学んでもらう人材育成の手法のひとつです。グローバル化が進んでいる近年、世界のトレンドや最先端技術の情報、社員のグローバルな知見や語学力などの習得を目指して、海外研修を実施している企業が多くなっています。多くのメリットがある海外研修ですが、実施には注意点もあります。この記事では、海外研修の概要に触れたうえで、実施するメリット・デメリットや成功させるためのポイントを紹介します。事例も紹介しますので、ぜひお役立てください。
海外研修とは
海外研修は、自社の社員を海外へ派遣して、世界のトレンドや最先端技術など情報収集を目的とするものや、グローバルな知見や語学力、外国人との関わり方などを身につけさせるものなど、幅広く行われています。まずは、海外研修の形態を紹介します。
海外視察
海外視察は、海外の企業などを訪問し最新の技術やトレンドを実際に現地で見て、最先端の情報を入手する研修です。そこで見聞きした情報を元にし、自社のビジネスに新しい気付きをもたらすことが狙いとなっています。
国際見本市
海外研修として、海外のさまざまな企業が自社の製品を展示・宣伝したり、商談を行う巨大な催しである国際見本市に行くケースもあります。有名なものとしては、CTA(全米民生技術協会)が主催し、毎年アメリカ・ネバダ州で開催している家電見本市「CES」や世界最大級の携帯電話関連展示会である「Mobile World Congress」などがあります。国際見本市では世界中の新しいトレンドやテクノロジーなどの情報を入手できるため、自社の事業拡大や業務の変革に役立てられます。
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語学研修
語学の習得を目的とするものです。海外語学研修を行う場合、社員は現地の語学学校へ通学します。一定期間、日本語を使用できない状況で生活し、短期集中的に語学力を高めるのが狙いです。
専門研修
語学力のほか、専門的な知識を習得させるために海外研修を実施する場合もあります。社員は現地のビジネススクールや大学などへ通学し、専門的な知識を英語やその土地の言語で学びます。
代表的なものがMBA(Master of Business Administration:経営学修士)です。MBAとは、経営学の大学院修士課程を修了したものに授与される学位のことで、英米圏においては、取得のために英語力や社会人経験などが必要だとされています。海外研修で社員にMBAを取得させれば、語学力と専門性を同時に高められます。
フィールドワーク
フィールドワークは、研究テーマに特化した調査活動です。海外でフィールドワークを実施し、現地の人と情報を交換しながら研究を深めていきます。そこで得た人脈は、帰国後もビジネスに役立てられる可能性があります。
インターンシップ
インターンシップとして、社員に海外の企業やNGOなどで一定期間働いてもらうパターンです。海外の働き方や仕事の進め方などを実際に体験しながら理解を深めることができます。海外で働いた経験は、仕事に対する責任や積極性を高める効果も期待できます。
ボランティア
海外研修として、発展途上国などで社員にボランティアをしてもらうケースもあります。ボランティアを通し、自主的に行動するスキルを向上させたり、異なる文化への理解を深めることができます。
海外研修を実施する主な目的とは
海外研修を実施する目的としては、どのようなものが挙げられるのでしょうか。ここでは、海外研修の目的について解説します。
自社の事業に関するヒント、海外事例を学び、世界的なトレンドや最先端のテクノロジーなどを知る
今後はビジネスに、より一層イノベーションが求められる時代となります。海外の事例から事業のヒントを学んだり、トレンドや最先端のテクノロジーについて理解を深めるために、海外研修を実施する企業が増えてきています。
グローバルスキルを身につける
グローバルスキルとは、語学力をはじめとし、異なる文化の相手とコミュニケーションを取る力、柔軟性、チャレンジ精神などを総称した能力のことです。社員に対して海外研修を実施すれば、これらのスキルを包括的に高められます。グローバルスキルを身につけた社員は、その後の業務において幅広く活躍できる人材になります。
語学力を向上させる
海外研修では、社員に対して外国語でコミュニケーションを取る機会を与えることができます。時には、外国語での深い意思疎通が必要になる場合もあります。日本ではなかなか触れられない独特の表現も習得できます。
社員の自立心を育てる
海外で研修を行う場合、社員は普段よりも積極的に行動しなければならない場面が多くなります。その結果、海外研修を通して社員の自立心を育てられます。業務において、社員が主体的に行動できるようになります。
異文化の刺激を受ける
社員が海外に行くと、異文化からさまざまな刺激を受けられます。それがきっかけとなり、自社の事業にとって重要なアイデアが生まれる可能性もあります。新たな顧客の開拓など海外へ行ったことそのものがビジネスチャンスになる場合もあります。
海外研修を行うメリット
海外研修を行うと、自社にとってさまざまなメリットがあります。ここでは、具体的にどのようなメリットがあるのか解説します。
会社の成長につながる
海外研修は、自社のビジネスに役立つ事例や世界の最先端のテクノロジーに触れることができます。また、それまで接点のなかった企業と交流する機会ができ、新しい顧客やビジネスパートナーの獲得につながるケースもあります。
社員の成長につながる
海外研修を通して社員自身が、さまざまな考え方を持つ人と出会えば、大きな刺激を得られます。さまざまな文化の違いを見つけて理解する経験は、社員の思考をより柔軟にします。それは、社員の視野を広げるきっかけとなり、人間としての大きな成長につながります。また多角的にビジネスについて考えられる機会となり、自社のビジネスの発展にもつながります。
短期集中できる
一定の期間を設けて海外研修を実施すると、社員自身も普段の仕事から離れ、集中して研修に挑みやすくなります。集中して語学や専門分野などを学べば、短期間でもしっかりとスキルや知識などを身につけられるでしょう。
新たな人脈が形成される
会社の枠を出て研修を行えば、それまでにない新しいつながりも生まれます。海外研修によって形成された人脈が、社員の将来の仕事や人生にも良い影響を与える可能性があります。また形成された人脈が自社のビジネスの拡大につながることも考えられます。
海外研修を行うデメリット
海外研修を行う場合、企業にとってデメリットとなる部分もあります。ここでは、具体的にどのようなデメリットがあるのか解説します。
手間・費用がかかる
海外研修を実施するには、研修にかかる費用を企業が支援する必要があります。研修の期間、場所、内容によっても異なりますが、1人あたり数十万から数百万円程度の費用を用意しなければなりません。
企業への還元が不透明
海外研修を実施する際は費用や手間がかかりますが、対象となった社員が必ずしも企業の期待に応えられるわけではありません。また、社員が海外研修の直後に退職すれば、研修を実施した意味がなくなってしまいます。
社員がプレッシャーを感じてしまう
海外研修にはたくさんの費用と時間がかかります。研修に行く社員自身もそのことを理解しているため、人によっては強いプレッシャーを感じる恐れがあります。場合によっては、社員にとって大きなストレスになる可能性もあるでしょう。
海外研修を成功させるポイント
海外研修を成功させるには、どうすればいいのでしょうか。ここでは、成功のポイントについて解説します。
社員に目的を理解してもらう
海外研修について具体的な目的を設定し、それを社員にしっかり理解してもらうことが大切です。そして、目的を達成するには、具体的に何をすべきかを伝える必要があります。帰国後の期待についても、あわせて共有することがおすすめです。
社内に周知する
海外研修の詳細については、社内全体に周知する必要があります。たとえば、海外研修の目的や対象者、内容を明確に示すことが重要です。
事前にきちんと準備する
海外で研修を行う場合、日本とは勝手が違う部分が数多くあります。そのため、事前の準備が重要です。具体的には、体調管理、病気の治療や投薬などの情報管理、海外研修中の住居管理などがあげられます。社員が海外研修に参加している間に業務が滞らないよう引き継ぎも行う必要があります。
研修先としっかり連携する
社員がスムーズに海外研修に参加できるようにするには、研修先との連携も重要です。綿密に情報交換を行い、研修中に自社の社員が困らないように対応する必要があります。たとえば、飛行機や宿泊先、現地の治安、物価、病気やケガをしたときに利用できる医療機関など、安心・安全のためにあらかじめ現地に確認しておきます。
研修中のフォロー体制を整える
海外研修に参加している間は、基本的に業務を進められません。そのため、同僚や上司によるフォロー体制を整え、対象となっている社員が安心して海外研修に参加できる環境を構築することが大切です。
フォローアップを行う
海外研修で得た経験を実務に活かすには、フォローアップが重要です。海外研修を振り返る機会を設け、社内で経験を共有する場を設けると効果的です。必要に応じて、海外研修に参加した社員の部署異動を行っている企業もあります。
海外研修を行っている企業の事例
さまざまな企業が海外研修を実施しています。2つの事例を紹介します。
企業事例01
ある企業では、グローバルに活躍できる人材を育てる目的で海外研修を実施しています。現地法人があるため、その営業部門や生産部門の業務を体験する研修を始めました。研修を通して実際に海外法人で働くと、海外赴任のやりがいについても理解できます。同時に、社員の語学力も向上しています。
企業事例02
ある企業では、ヨーロッパやアジアなど海外のさまざまな場所で社員の研修を行っています。最初の半年間は現地の大学で語学研修を実施し、その後、現地法人で実務を経験する流れです。この企業では、研修に参加した社員が将来の海外赴任の有力候補になることを期待しています。
まとめ
海外研修は、ビジネスのヒントや新たな気づきを得たり、社員のビジネススキル全般や語学力を向上させる目的で多くの企業が実施しています。海外研修を実施することは、社員自身の成長と企業の事業成長につながる可能性があります。ただし、決して安くはない費用がかかるため、効果や方法をよく検討したうえで、実施する必要があります。
今回ご紹介した通り、海外研修を成功させるには社員に研修の目的を理解してもらい、準備をしっかり整えることが大切です。企業の研修は、新型コロナウイルスの影響により変化しています。JTBでは、研修の在り方について解説している資料をご用意しています。「社員研修INNOVATIONS」では、具体的な13の研修プログラムについても紹介しています。ぜひ、ご覧ください。