株主総会とは、ご存じの通り株式会社であれば必ず行わなければならないもので、株式会社にとってかなり大きなイベントです。株主が一堂に会するため失敗は許されません。効率よく運営するためにはしっかりと事前準備をしなければなりません。この記事では、株主総会の担当者に向けて、株主総会の運営方法について解説します。
INDEX
株主総会の運営準備の重要性
株主総会とは、株式会社に開催が義務付けられたもので、毎年定められた時期に開催しなければなりません。会社法により株主への通知なども決められているため、法律違反にならないようにしっかりと準備をする必要があります。
また、株主総会の内容は経営や人事などにおいても重要なものであるうえ、株主からの予想外の質問がくることもあるため、しっかりとした事前準備が必要です。
株主総会のスケジュール
株主総会を開催するタイミングは、法律で「事業年度終了後一定の時期に招集する」と定められています。ただし、事業年度終了から3ヶ月後であることが一般的です。3月末が事業年度終了である企業が多いため、6月にはたくさんの株主総会が行われています。
株主総会の運営 ~事前準備~
先述したとおり、株主総会を運営するためには事前準備が大切です。どのように準備すべきか解説します。
開催日・会場の決定
日時や会場が決まらないと株主に招集通知を発送できないため、まずは、いつどこで株主総会を行うのか決めましょう。開催日は基本的に事業年度終了から3ヶ月以内、会場は自由に設定できます。ただし、株主の人数や立地、設備などをチェックし、株主に不快に思われないような工夫は必要です。法律の改正により、ハイブリッド型バーチャル株主総会、バーチャルオンリー株主総会も可能となりました。
招集通知の発送
株主総会の招集通知とは、株主に対して以下のようなことを伝達するものです。
- 開催日時
- 開催場所
- (ある場合は)開催目的事項
この株主総会の招集通知は、公開会社は株主総会の2週間前、非公開会社は1週間前までに行わなければなりません。これは会社法で決められたことであるため、しっかりとスケジュールを守る必要があります。
想定問答集の作成
想定問答集とは、株主からの質問と答え方を事前にまとめたものです。株主総会では、株主からの質問に取締役や監査役が答えなければなりません。質問に答えられない、しどろもどろになる、といったことがあると株主からの信頼を失ってしまいます。事前にある程度は予測し、適切な回答を用意しておきましょう。
リハーサルの実施
株主総会は多数の株主が集まるため、会場での案内に手間取ってしまう可能性があります。特に、初めて開催する時や、業績が低迷している時は混乱しがちです。緊急事態が起こることもあるため、さまざまなケースを想定し、リハーサルしておきましょう。台本を用意し、その通りに進められるようにしっかりと練習するのがポイントです。
株主総会の運営 ~当日~
株主総会当日にも、やることは数多くあります。株主総会当日の運営方法について説明します。
会場設営・受付
株主が到着する前に会場を設営します。ノベルティや記念品を配る企業は、会場にきちんと用意できているか確認しましょう。
部外者が侵入しないように、受付で株主、または株主代理人であることを確認する必要があります。受付を通ってから会場に入るように導線の管理も必要です。
議事の進行
基本的に議長は代表取締役で、以下のような流れで進行します。
- 役員入場
- 代表取締役を議長として指名
- 開会宣言
- 今回の株主総会に関する説明
- 株主数や議決権、事業内容報告
- 議案
- 審議
- 株主の質疑応答
- 採決
- 閉会宣言
こまかな流れは企業によって異なるため、その時の自社の状況にあわせて進行しましょう。
株主総会の主な議案
株主総会では議案の提起を行います。よくある株主総会の議案を紹介します。
事業報告の報告と計算書類の承認
株主総会を行う時には、事業報告と貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書などの計算書類の承認を受けなければなりません。取締役はこれらの内容を報告し、株主からの承認を得ます。紙の書類として作成し、監査役および会計監査人の監査を受け、取締役会の承認を受けるといった準備が必要です。
取締役・監査役の選任
取締役は2年、監査役は4年で任期が訪れます。その任期を迎える年には取締役と監査役の選任を行います。取締役・監査役の選任は会社だけではできず、株主総会の議決を行わなければなりません。ただし、非公開会社では取締役や監査役の任期を10年まで延ばせます。
役員報酬の決定
会社法によると、役員報酬の決め方は定款もしくは株主総会の決議によって決めなければなりません。そのため、定款に特に記載がなければ株主総会で役員報酬を決定します。株主総会で決める理由は、取締役会だけで役員報酬を決めると不当に吊り上げてしまう危険があるためです。
株主総会の留意点
次に、株主総会開催時に企業が留意すべき点である説明義務や採決方法について解説します。
取締役・監査役は説明義務がある
取締役や監査役は株主に対して説明義務があります。そのため、株主から質問を受けた時には無視することはできません。株主からの信頼を失わないようにきちんと答える必要があります。ただし、株主総会の目的から外れている質問、監査が必要な質問、同じ質問が繰り返されるような時には拒絶が可能です。
採決方法は議長の判断で行う
議案を提示し、株主からの質問が終了すると、議案の採決に入ります。ただし、議案ごとに採決する方法でも問題はありません。
会社法などには採決の方法について特に定めがないため、最終判断は議長が行います。採決方法は企業によって異なり、挙手や投票など以外にも、拍手など数を把握できない方法での採決も可能です。
株主総会の運営 ~終了後~
株主総会が終わった後も、まだ議事録の作成や登記変更などの手続きがあります。具体的にどのようなものなのか解説します。
議事録の作成
株主総会で決まった議案の結果などは、株主総会議事録として保管しなければなりません。これは税務調査や登記の時に必要になるため、必ず作成します。会社法の定めにより、議事録は原本を本店に10年間、写しを支店に5年間保管しておく必要があります。
登記変更の手続き
株主総会にて、役員や本店、支店の所在地が変更となった場合は、登記の変更も必要です。この登記変更の手続きは、株主総会から2週間以内に行わなければならないと法律で決められています。この期限を過ぎると過料が発生するため、注意が必要です。登記変更はオンラインでもできます。
株主全員の同意があれば株主総会を省略可能
中小企業の場合は、株主全員が株主総会の目的について同意すれば、株主総会で決議したことにできます。そのため、会場を設営し株主を招集する必要はありません。ただし、実際に株主総会を開いていなかったとしても、議事録の作成は必要です。
オンラインによる株主総会も可能
コロナ禍の影響を受けて、会社法の特例として、「場所の定めのない株主総会」が創設され、オンラインによる株主総会が開催できるようになりました。ただし、この制度を利用するためには、経済産業大臣および法務大臣の「確認」が必要であるため、事前に相談や申請をしなければなりません。
ハイブリット型バーチャル株主総会の事例
とある大手事務機器メーカーでは、ハイブリッド型バーチャル株主総会を採用しました。参加方法が多様化することにより、多くの株主の希望に応えられた総会になりました。
JTBの株主総会サポートサービス
株式会社JTBでは、すでに多くの企業に対して株主総会のサポートを行ってきました。そのノウハウを活かし、オンライン上の株主総会であるハイブリッド型バーチャル株主総会、バーチャルオンリー株主総会のサポートも行っています。プランニングから当日の総会実施、開催後のフィードバックまで、トータルでサポートしています。株主総会でお悩みの担当者の方はぜひご相談ください。
株主総会運営に役立つJTBのホワイトペーパー
JTBでは、株主総会運営に役立つホワイトペーパーやセミナー動画を用意しています。その中からおすすめのものを紹介します。
バーチャル株主総会について学べる資料
バーチャル株主総会の開催が法律で認められるようになりましたが、まだ開催に不安を感じている企業が多いのではないでしょうか。JTBでは、バーチャル株主総会について、オフラインでの開催と組みあわせたハイブリッド型とあわせて、開催方法をご検討いただくための資料を用意しています。バーチャル株主総会を学べる内容となっているため、初めて株主総会を担当する方にもおすすめです。
まとめ
株主総会は法律で定められているため、株式会社であれば必ず開催しなければなりません。法律の改正により、現在ではハイブリッド型バーチャル株主総会やバーチャルオンリー株主総会も認められており、企業の選択肢は広がりました。ハイブリッド型バーチャル株主総会にしたことで、これまで参加していなかった遠方の株主が参加できるようになったなど、メリットも明らかになりました。自社の株主総会の開催方法を検討する際は、それぞれのメリット・デメリットを把握することが大切です。そのうえで、しっかりと準備することが成功への近道だと言えます。この機会に、自社の株主総会の在り方について考えてみてはいかがでしょうか。
関連情報
バーチャル株主総会(ハイブリッド型バーチャル株主総会/バーチャルオンリー株主総会)