JTBは、2021年11月に「JTB ビジネスイベント革命2021~ニューノーマルにおける新たなビジネスコミュニケーションの共創~」と題してリアルとオンラインを融合させたハイブリッドセミナーを開催しました。ニューノーマル時代において、企業経営に直結するビジネスイベントは新たな開催価値を求められています。ゲストスピーカーに法政大学大学院 教授・一橋大学名誉教授の米倉誠一郎氏をお迎えし、これから企業が取り組むべき生産性向上のカギは何か、企業への共感やロイヤルティを醸成し、ユーザーのニーズに応えるビジネスイベントについて、ニューノーマル時代に求められるビジネスイベントの事例などを交えてお話いただきました。
INDEX
- イノベーションを起こすためには
- 生産性向上のカギはイノベーションにある
- イノベーションとは何か
- イノベーションに大事なのは新しい視点
- デジタル✕リアルイベントの進化と多様性の考え方
- ニューノーマル時代のビジネスイベントコンテンツとは?
- イベント実施におすすめの3つのソリューション
- JTBがプロデュースするビジネスイベント事例
- まとめ
開催概要
- 開催日
- 2021年11月26日(金) 16:00~17:30
- 開催方式
- ハイブリッド開催
プログラム
- 出演者
- 米倉 誠一郎 氏(法政大学大学院 教授・一橋大学名誉教授)
- 出演者
- 米倉 誠一郎 氏
大塚 雅樹(株式会社JTB 取締役常務執行役員ビジネスソリューション事業本部長)
- 主催
- 株式会社JTB
登壇者紹介
東京生まれ、ハーバード大学歴史学博士 PhD/現職、法政大学大学院教授/一橋大学 名誉教授/一般社団法人Creative ResponseSocial Innovation School 学長。
学外活動では、ソニー戦略室長、 プレトリア大学日本研究センター所長 などを経て、『一橋ビジネスレビュー』編集委員長 を兼務。
現在、 株式会社 教育と探求社 社外取締役 、インフロニア・ホールディングス株式会社社外取締役。
NPO 法人 eEducation ・アドバイザー、 NPO 法人クロスフィールズ・アドバイザー、 NPO 法人ティーチャーズ・イニシアティブ理事などを務める一方、いくつかのベンチャー企業の顧問・アドバイザーも務めている。一橋大学 社会学士・経済学士・社会学修士、ハーバード大学博士。専攻は、イノベーションを核とした戦略と組織の歴史的研究。
著書に、『経営革命の構造』(岩波新書)、『創発的破壊:未来をつくるイノベーション』(ミシマ社)、『オープンイノベーションのマネジメント』(有斐閣)、 『2枚目の名刺:未来を変える働き方』(講談社)、 『イノベーターたちの日本史:近代日本の創造的対応』(東洋経済新 報社)、『松下幸之助:きみならできる、必ずできる』(ミネルヴァ書房)など多数。
趣味はロックンロールとゴルフ。
イノベーションを起こすためには
第一部の基調講演では、法政大学大学院 教授・一橋大学 名誉教授の米倉誠一郎氏にご登壇いただきました。
生産性向上のカギはイノベーションにある
1998年から2018年の名目GDPを世界と日本で比較した際、中国1,295%、韓国445%といった伸び率に比べて、日本は123%とほとんど成長していないことがわかりました。経済的な影響力において、日本は危機的状況下にあります。
どうして日本は世界と比べて、GDPが伸び悩んでいるのか。その理由の一つに「生産性が低すぎること」があります。OECD諸国の生産性を比較してみると、日本は21位で時給に換算すると46ドル80セントという結果です。日本の大企業は内部留保485兆円を積み上げた一方で、労働分配率つまり賃金は歴史的低水準となっています。日本は約20年間、賃金が上がらず、生産性が低い労働環境だということです。これでは、日本がグローバル市場で戦っていくには非常に厳しいと言わざるを得ません。
この状況を変えるためには、総産出量の増加(GDPの増大)か、総投入量の減少(労働時間の短縮)しかありません。これを実現するために投資すべきなのが、「デジタル」です。眠らず、腹も減らず、賃上げ要求もしないデジタルを24時間365日働かせて、人間の投入量を減らし、付加価値をつけることで生産性を上げればよいのです。つまり、デジタルによるイノベーションこそ生産性向上のカギと言えるでしょう。
イノベーションとは何か
オーストラリアの経済学者であるヨーゼフ・アロイス・シュンペーターは「現状の均衡を創造的に破壊して、新しい経済発展を導く」ことがイノベーションだと説きました。彼はイノベーションを「the doing of the new things or the doing the things that are already being done in a new way」と定義し、イノベーションは技術革新だけではないことを我々に教えてくれました。
ここで、技術革新ではないイノベーションとは何かをお話しましょう。60年ほど前、イエール大学のフレデリック・スミスという学生が、全米150の都市すべてに翌日に荷物を届ける方法として、149機の飛行機を用意し、メンフィスに集合させて荷物を交換し、翌朝に各都市に戻るアイデアを思い付きました。これはハブ&スポークという輸送方式で、後にこの学生は世界最大手の物流会社であるFedExを創業しました。
イノベーションに大事なのは新しい視点
シュンペーターは、イノベーションには「in a new way」=視点転換、すなわち異なった見方が重要と解説しています。
世界でもっとも売れているハンディカムGoProは、これまでのハンディカムの固定観念を覆し、アウトドアをマーケットにした破壊的イノベーションで大成功しました。イタリアの自動車メーカーのアルファロメオは中国に進出する際、圧倒的なユーザーデータを持つアリババへ相談し、販売戦略を検討しました。資産2億円以上、3年以上前に外車を買っている、イタリア製品が好きというターゲット層に絞ってマーケティングを打ち、350台をなんと33秒で完売させました。このような世界のイノベーションやデジタルマーケティングと比較して、日本は間違った方向性で働いているから生産性が低いのではないでしょうか。
イノベーションを起こすためにもう一つ重要なのは、ビジネスドメインです。狭く定義しないで、コアコンピタンス=「自分たちは何が強いのか?」を定義し直すことが大事なのです。ナイキは、「スポーツライフを楽しむ人たちのブランド」というビジネスドメインに変換することで、ブランディング強化に成功しました。
デジタル✕リアルイベントの進化と多様性の考え方
第二部では米倉誠一郎氏と、JTB大塚雅樹との対談が行われました。
- 大塚
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弊社では、コロナ禍でも安全にビジネスイベントが行える「ハイブリッドインセンティブアワード」というオンラインイベントを提案しています。ワクチン接種が進み、コロナ禍が落ち着いた頃にビジネスイベントのリアル開催を望む声が増えました。しかし、今後はハイブリッド開催がトレンドになるだろうと予測しております。こうしたニーズを受け、企業側の手間を省き、理想的なイベントを運営できるCvent※1というカンファレンスプラットフォームを弊社では提供しています。
ここで、ビジネスイベントの事例としてシステム開発会社の創立50周年記念オンラインイベントを紹介させてください。こちらの企業様は、客先に出向いて仕事をしている社員が多く、事業部間の交流がないという課題がありました。創立50周年を機に、若手社員のメンバーが“参加を通じて全社が一つになろう”という意味を込めてテーマ「ONE」を掲げて、記念イベントを企画しました。リアルでやる予定だったギネス世界記録もオンラインで実施し、社員一丸となってチャレンジすることができました。
1 Cventは、イベントの計画からプロモーション、実施に至るまでの各種機能(サービス)を同一プラットフォーム上で実行・管理できるイベントマネジメントソフトウェア(EMS)です。詳しくはこちら
- 米倉氏
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これからは、企業が社員のモチベーションをどのくらい上げられるのかが重要ですから、モチベーションをマネジメントするという意味でも、イベント開催はおもしろいですね。今後は、デジタル技術を使ってどう社員同士のコミュニケーションの質を高めるのか、モチベーションを高めるのかが生産性向上のカギになっていきます。現状を把握して、ビジネスドメインを再定義して、どう学習していくかが重要です。
イベント以外の事例を挙げますと、ある大手人材サービス企業が移転したオフィスがあります。古いビルをリノベーションしたそのオフィスには、働きやすさを重視したさまざまなイノベーションがありました。いかにもな高層ビルの中にあるのではなく、古いビルに新しいテクノロジー技術を活用する視点に驚きました。これからは、このように先端テクノロジーの中に人の温もりが感じられる演出がトレンドになる気がしますね。ハイブリッド開催などのオンラインイベントも、これまで当たり前だったリアルでの交流がどれくらい大切だったのかを再認識する場でもあると思います。
また、ニューノーマル時代では多様性に視点を向けることも無視できません。ある大手IT企業には働くママさんのため、授乳室が用意してありました。その理由を社長にお聞きすると、「顧客の多様化に併せて、企業も変化しなければならない」と答えられました。これまでの延長線上にないもの、違うことをやる先に生まれるのがイノベーションです。企業がこれまでと違う視点を持つためには、「よそもの、若者、バカ者」を登用することが大事です。
ニューノーマル時代のビジネスイベントコンテンツとは?
第三部では、株式会社JTB ビジネスソリューション事業本部 事業推進チーム担当部長の金井大三より、ニューノーマル時代のビジネスイベントコンテンツをご紹介しました。
イベント実施におすすめの3つのソリューション
セミナー参加者に事前に行ったCventアンケートの回答結果では、社外向け・社内向けともにハイブリッドイベント開催の意向が圧倒的に多いことがわかりました。ニューノーマルはハイブリッド開催が主流になるだろうと予想されます。そこでイベント開催を成功させるために、JTBがおすすめするサービスを3つご紹介します。
一つ目の「Cvent」は、イベントの設計・受付・運営、アンケート集計やビッグデータの解析、次回の開催案などを一気通貫できることが特徴です。
2つ目の「医療マネジメント」は、医療専門チームと連携してガイドラインの作成、24時間365日お医者様とのコンタクトが取れるアプリ、オリンピックでも活用されたバブル方式での医療管理を提供します。
最後の「CO₂ゼロMICE」は、イベントに使用する電気をカーボンオフセットの仕組みを利用して再生可能エネルギーに置き換え、CO₂の排出量を実質ゼロにするものです。
JTBがプロデュースするビジネスイベント事例
ニューノーマル時代に開催できる、具体的なイベント事例を2つご紹介します。
事例01JR東海とユニバーサル・スタジオ・ジャパンのインセンティブ旅行
社内向けのインセンティブイベントです。予約から到着後の2次交通の手配まで、一貫して管理できるシステム体制で旅行をサポートします。出発の前や後、駅の中でワーキングスペースを確保したいときもJR東海様のサービスが利用可能です。目的地のUSJでは、臨場感溢れるシアターライブショーを貸し切り、壮大なイリュージョンを体験できるパーティーを楽しめます。
事例02日本航空とフェニックス・シーガイア・リゾート宮崎の顧客・代理店招待会
こちらは、チャーター機を利用した特別感のある社外向けイベントとなります。国内線チャーターフライトプログラムを利用し、思い出に残るフライト演出を実現します。目的地は、宮崎県が誇るリゾート施設「フェニックス・シーガイア・リゾート」です。シーガイアは、ゴルフ場のメッカ「フェニックスカントリークラブ」があります。宿泊施設はホスピタリティが充実したサービスが特徴で、忘れられない体験が得られるでしょう。
まとめ
今回は、2021年11月に開催されたハイブリッドセミナー「JTB ビジネスイベント革命2021~ニューノーマルにおける新たなビジネスコミュニケーションの共創~」の様子をお伝えしました。
第1部の基調講演であったように、日本は約20年間、賃金が上がらず、生産性が低い労働環境だと言われています。日本がグローバル市場で戦うには、生産性の向上が必須であり、そのカギがデジタルによるイノベーションです。そして、イノベーションを実現するには、多様性を重視し、これまでにない新しい視点を持つことが求められます。
企業において多様性を重視し、これまでにない新しい視点を持つために、今後、ビジネスイベントがより重要な役割を担うのではないでしょうか。米倉氏からも、「これからは企業が社員のモチベーションをどのくらい上げられるのかが重要」との指摘がありました。
これからのビジネスイベントには、「社員の多様性を認め合う場」「自分とは違った視点に出会う場」という要素が求められるのではないでしょうか。そのような気づきの場が、社員のモチベーションを高め、イノベーティブな社内風土を創るのだと思います。
これを機会に、貴社でも社員のモチベーション向上やイノベーティブな社内風土を創るために、ビジネスイベントの活用を検討してみてはいかがでしょうか。
「JTBビジネスイベント革命2021」メイキング動画
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