企業研修とは企業が従業員の意識を高めたり、従業員のスキルアップや知識習得のために行うものです。コロナ禍により、この企業研修も大きく変化しています。本記事では、コロナ禍による企業研修の変化や種類、階層ごとに行うと良い研修についてご紹介します。企業研修の目的や対象者、メリット、デメリットについても合わせてまとめていますので、アフターコロナの企業研修を企画・実施する際の参考にしていただければと思います。
INDEX
- コロナ禍の企業研修
- 企業研修の目的と対象者
- 社内研修と社外研修の違い、メリット・デメリットは?
- 研修の種類
- 階層(対象者)ごとに行うと良い研修とは?
- まとめ
コロナ禍の企業研修
企業研修にはいろいろな種類があります。代表的なものは「新入社員研修」や「新任管理職研修」などです。通常は対象者それぞれのレベルに合わせた研修を行います。また、企業研修は企業外で行う方法もあります。昨今のコロナ禍により研修にも変化が生じてきました。
コロナ禍による研修の変化
テレワークによる在宅勤務の広がりにより、研修のオンライン化が進みました。オンライン研修の場合、研修の効果を高めるには、対面型よりも研修中のモチベーション維持が非常に重要です。講師と受講生に物理的な距離があるため、講師が受講生を常に見ることができない、コミュニケーションを図れないというのがモチベーション維持を難しくしている大きな要因です。オンライン研修は、このような事情から受講生の自律性に依存するところが多いため、受講生の主体性をいかに引き出すのかがポイントになります。アフターコロナの研修は「管理型」から「共感型」へとマネジメントの方法が変化していくものと考えられます。
コロナ禍以降の研修の実施例
ある会社ではコロナ禍以降の研修では、教育における3点の強化を目指しています。ひとつは「質の向上」、次に「量の増加」、そして「パーソナライズ化」です。質の向上については、従来の紙媒体と集合研修で行っていたインプット型の研修をデジタルに移行しました。AI評価に基づくフィードバックやロールプレイング動画の提出により、研修の質の向上が実現しています。
また、インプット型の研修をデジタルに移行しインプットを各自で行ったことで、オンライン研修をアウトプットの時間に変えることができ、アウトプットの量を増やすことができました。パーソナライズ化については、研修成果をデジタルにより可視化することで、個別最適学習をシステム化できる仕組みを作っています。
企業研修の目的と対象者
ここからは企業研修の目的と対象者について考えていきます。
企業研修の目的
企業研修は以下のような目的があげられます。
- 社員の成長
- 企業の成長
- 人材育成
- 組織開発
研修を行うことで従業員の個々の能力を高めるという狙いがあります。そのための研修として、新人研修や管理職研修、年代別研修、職種別研修と幅広い研修が行われています。個々のレベルアップが企業全体の底上げにもつながります。
企業研修の対象者
前述したとおり、企業研修の対象者は新入社員だけではありません。多くの企業では、部署が変わったり、役職が上がった従業員も研修の対象としています。企業研修は業務を行う上で必要なスキルを身につけるために行われます。そのため、新人、中間管理職、ベテラン問わず、従業員全員が対象となります。
社内研修と社外研修の違い、メリット・デメリットは?
企業研修は、大きく社内研修と社外研修に分けられます。それぞれどのような違いがあるのでしょうか。メリット・デメリットについても触れながら解説していきます。
社内研修と社外研修の違い
社内研修は、人事部やマネジメント層など、社内の人間が行う研修です。社内研修は、理念教育や自社独自の仕事の進め方や考え方など、外部に委託するとかえって非効率的になるものに適しています。
一方、社外研修は、社外の外部機関や企業が用意しているプログラムに参加したり、自社に外部講師を招いて行う研修のことです。社外研修を行うことで、社内とは異なる価値観に触れることができ、新たなアイデアが生まれるきっかけにもなります。
社内研修
メリット
社内研修のメリットは社風にあった研修を選定できるということです。そのため、企業理念や行動指針、規則、ビジネスマナー、コンプライアンス、情報セキュリティなどの知識を社内に浸透させることができます。これは自社の従業員に企業の存在意義や理念を共有する概念である、インナーブランディングの考え方に沿っています。
デメリット
社内研修のデメリットは、研修の目的やゴールがはっきりとしていない場合、受講者が受動的になる可能性が高いということです。そのため、社内研修を行う際は、しっかりとした目的やゴールを決めることが大事と言えます。
社外研修
メリット
社外研修のメリットは専門性の高いスキルを身につけられることです。また、自社で研修の準備を行う必要がないこともメリットといえます。自社以外の人と情報交換することで、モチベーションアップや新たな気づき、学習意欲の醸成につながることが期待できます。
デメリット
社外研修のデメリットは、社外講師や研修プログラムを選定する時間や研修費用が発生することです。そのため、ある程度の費用・時間のコストは必要になると考えておいた方がいいでしょう。
研修の種類
企業研修にはさまざまな形式があります。ここでは、体験型研修・視察型研修・OJT・OFF-JT・eラーニング・グループワークの6種類について詳しく解説します。
体験型研修
体験型研修は、実際に社員で合宿を行う研修です。仕事を離れ、現地でのリアルな体験を通じて、社員同士がコミュニケーションを図り、共同作業をするため、ビジョンシェアリングやチームワークの強化に最適な方式と言えます。あるIT企業では、沖縄で体験型研修を実施しています。
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視察型研修
視察型研修は、コロナ禍以前に実施していた海外視察ツアーをオンラインで行う研修です。海外のスタディワークショップを通じて、日本にはまだない最新のテクノロジーなどを体験できます。内容は現地の講師によるレクチャーやワークショップ、現地の様子を撮影した動画の視聴などです。プログラムを通じて海外の最新情報を学びます。
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OJT
OJTとは、On-The-Job-Trainingの略で、実務を行いながら仕事を覚える研修を指します。例えば、現場で先輩社員が新入社員に対して教育を行うなどが挙げられます。しかし、教える側の社員が育成について学ぶ機会がないことや、社員に任せすぎて教える側に負荷がかかるという問題もあるため注意が必要です。
OFF-JT
OFF-JTとは、Off the Job Trainingの略です。社内外の講師を招き、職場や通常の業務から離れ、特別に時間や場所を取って行う教育方法です。会社のコンプライアンスやビジネススキル、マネジメント術などの講義が一般的です。また、外部のスクール・セミナーなどに社員を参加させるケースもあります。
e-ラーニング
eラーニングは、インターネットを介してPCやスマートフォン、タブレットを用いて受講する研修です。講師と従業員の間でリアルタイムに交流はできない一方、通信環境さえあれば時間・場所にとらわれず実施できるのが最大の特徴です。
グループワーク
グループワークは、共通の課題や問題を解決するために、グループでディスカッションや作業をする研修になります。複数名で行うため、企業内のコミュニケーション円滑化や、組織活性化にもつながります。
階層(対象者)ごとに行うと良い研修とは?
企業研修を階層ごとに行うことで良い効果が期待できます。その研修内容について以下で詳しくご紹介します。
新卒から若手社員向けの研修
まず最初に、新卒から若手社員向けの研修を紹介します。新卒社員の場合は基本的に社会人経験がありません。若手社員もまだ社会人として十分な経験を積めていません。そのため、社会人としての基本的なルールやスキル、ビジネスマナーを中心とした研修を行います。
ビジネスマナー研修
ビジネスマナー研修は、新卒社員や若手社員を対象に以下のような内容の研修を行います。
- 社会人としての身だしなみ
- 表情や態度
- 挨拶やお辞儀の仕方
- 言葉遣い
- 名刺交換
- 電話、メール対応
これらの基本的なビジネスマナーを身につけるために行います。
セルフマネジメント研修
セルフマネジメント研修は、客観的な物事の判断、課題解決、業務の効率化などが含まれる研修内容が多い傾向にあり、主にPDCAサイクルの必要性などを身につけます。
中堅社員向けの研修
中堅社員向け研修は主に、入社3年目以降の役職者ではない社員を対象に行います。研修を通じて、ビジネスやコミュニケーションのスキルなど実践的なスキルを身につけます。中堅社員向け研修には以下のようなものがあります。
リーダーシップ研修
リーダーシップとは何か、を理解するための研修です。リーダーシップを身につけることで、部下のやる気を引き出すコミュニケーション能力や、業務実行力、結果を出すために必要な企画力や発想力などが身につくことを期待できます。
問題解決研修
問題解決研修は、業務において問題が起きた場合に、どのような手順で問題解決するかを学ぶ研修です。たとえば、問題が起きた際の本質的な部分をとらえ、潜在する問題を発掘する力が身につくことを期待できます。
管理職向けの研修
管理者向け研修は、会社の求める管理者やリーダー像を明確に設定した上で、リーダーシップやマネジメントを発揮させるための研修です。管理者向け研修には、コーチング研修やマネジメント研修などがあります。
コーチング研修
コーチング研修は、部下に対してコミュニケーションを取りながら、問題解決の答えを本人から引き出すスキルを身につける研修になります。研修を通じて、承認や傾聴、質問のスキルを身につけリーダーシップを発揮できる人材育成が期待できます。
マネジメント研修
マネジメント研修は、目標達成のためのマネジメントや、部下の育成方法を身につけるための研修です。具体的には、目標達成のためのPDCAサイクルの回し方や、部下の指揮を高める方法などが含まれるものが多いです。
経営者や役員向けの研修
従業員だけではなく、経営者や役員向けの研修もあります。内容としては経営戦略や最低限の法律の知識などの研修です。具体的に、経営者、役員向け研修には、経営戦略研修、法務研修、リスクマネジメント研修などが代表的です。
経営戦略研修
経営戦略研修は、どの戦略が会社の利益につながるかを考える研修です。たとえば、3C分析やSWOT分析といった基本的なフレームワークを活用します。これらの戦略の目的や手順に関する研修が多い傾向にあります。
法務研修
法務研修は、役員に必要な法的義務と責任、または会社との法律関係を身につけることが目的です。内容は以下のような知識があげられます。
- コーポレートガバナンス保持のためのチェックポイント
- 労働法や個人情報にまつわる法律知識
- ビジネス法務
- 契約書の基本的な知識
- 債権管理、回収の知識
これらの企業法務を網羅的に研修します。
リスクマネジメント研修
リスクマネジメント研修は、経営者としてのリスクマネジメントに必要なプロセスを順に学ぶ研修です。具体的には、経営に関するリスク予測や、それらに対処するスキルを習得することが目的とされます。
階層に関係なく目的に応じて行う研修
企業研修には、これまで紹介してきた研修の他にも、階層に関係なく行う研修もあります。ここでは、スキルアップ研修やリスクマネジメント対策につながる研修についてご紹介します。
スキルアップ研修
代表的なスキルアップ研修としては、PCやMicrosoft Officeなどの活用スキルやヒアリングやプレゼンテーションのスキルを身につける研修です。研修を行う際は、社員のスキルによってそれぞれのレベルにあった研修を用意することをおすすめします。
リスクマネジメント対策になる研修全般
リスクマネジメント対策も階層に関係なく行う研修になります。具体的には、以下のようなものがあります。
- 情報セキュリティ研修
- コンプライアンス研修
- ハラスメント防止研修
- 労務管理研修
これらの内容は階層に関係なく必要とされ、誰もが身につけておくべき知識と言えます。
まとめ
今回は、コロナ禍における企業研修の変化とともに、企業研修の種類や階層ごとに行うと良い研修についても紹介しました。
テレワークによる在宅勤務の広がりにより、研修のオンライン化が進みました。オンライン研修の場合、研修の効果を高めるには、対面型よりも研修中のモチベーション維持が非常に重要です。講師と受講生に物理的な距離があるため、講師が受講生を常に見ることができない、コミュニケーションを図れないというのがモチベーション維持を難しくしている大きな要因です。オンライン研修は、このような事情から受講生の自律性に依存するところが多いため、受講生の主体性をいかに引き出すのかがポイントになります。アフターコロナの研修は「管理型」から「共感型」へとマネジメントの方法が変化していくものと考えられます。
また研修は、目的と対象者に応じて、社内のリソースを活用するのか、外部に委託するのか、また実施形態はどうするのかなど検討すべき事項が多岐にわたります。ある会社ではコロナ禍以降の研修として、「質の向上」、次に「量の増加」、そして「パーソナライズ化」の3点を強化していました。
コロナ禍によってビジネスの環境、そして社員の働き方や価値観の多様化など研修を行ううえで押さえておくべき背景が大きく変わりました。研修のあり方についても再検討する必要があるのではないでしょうか。この機会に、貴社でもアフターコロナの研修のあり方について、改めて検討してみてはいかがでしょうか。