新型コロナウイルス感染症の流行は、日常生活における行動や価値観を大きく変えただけでなく、経済活動にも大きな影を落としました。企業が開催するビジネスイベントは軒並み延期・中止となり、形態をオンラインに変えて実施する動きが常態化しています。
コロナ収束を見据えてビジネスイベントをリアル開催で再開すべきか、それともオンライン開催を継続すべきか。経営者やイベント運営の担当者は、その判断に迷うかもしれません。アフターコロナのビジネスイベントはどう変化していくのでしょうか。JTBは2021年9月18日~19日にインターネット調査を実施。ビジネスイベント領域における企業のイベント実施状況をリサーチしました。そこで本記事では、インターネット調査の結果から見えてきた“ノーマル”が変化を遂げてきた世の中での「ビジネスイベントのあり方」についてご紹介します。
BtoBビジネスにおけるビジネスイベントの実施状況は?
調査概要
調査手法 | インターネット調査(外部調査会社のパネル利用) | |
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調査対象者 | 20歳~69歳までの日本人 | |
調査エリア | 日本全国 | |
調査条件 | 以下の3条件とする
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サンプルサイズ | 合計618サンプル | |
調査期間 | 2021年9月18日(土) ~ 19日(日) | |
設問数 | 全37問 | |
調査内容 |
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2021年度の開催手法・予算傾向の変化
まずは、新型コロナウイルスの蔓延前後におけるビジネスイベントの開催手法の変化を見ていきましょう。「新型コロナウイルスの蔓延以前(~2020年1月以前まで)は、どの会議・イベントを開催していたかを、開催形態と併せて教えてください」という質問に対し、2020年1月以前までは、開催したとしても、いずれのイベントに関しても「オフライン」が半数程度、「ハイブリッド」は10%程度という回答でした。
2021年度になると、 すべてのビジネスイベントにおいて「オンライン」で実施したという回答が半数以上、「ハイブリッド」も 30%程度まで増加しました。オンラインに変更した理由として多く挙げられたのが「オフラインで開催する必要性がないため」「引き続き新たな感染リスクの懸念があるため」でした。こうした傾向から、新型コロナウイルス感染拡大がある程度収束し、イベント開催を阻害する制限がない状況になった場合もハイブリッド開催意向の回答が非常に多く、社外向けビジネスイベントは安全面を確保できる方式で継続して実施したいという背景が読み取れます。
なお、開催しない理由としては、「引き続き新たな感染リスクの懸念があるため」が最も多く、 開催する理由がなくなったのは10%となっています。
次に、ビジネスイベントの予算傾向についてです。社外向けビジネスイベントでは、例年と比較して予算増加の比率が高いことが上記グラフからわかります。
イベント参加者はどのような意義を感じているのか?
参加者に対して実施した目的別オフライン・オンライン参加意向に関する質問では、「セミナー・カンファレンス」「研究会・研修」といった聴講型のイベントは、「近くでもオンライン」で参加したいという意向が強く、一方で「商談会」「運動会・スポーツフェスティバル」といった相対する他者との関わりが強いものは「遠くても現地で参加したい」という意向が強い結果となりました。
ビジネスイベントといっても、社内向け・社外向けでイベントの目的や参加者は大きく異なります。したがって、参加意欲を高めるための集客方法や開催方式も変わってきます。イベントを任された担当者は、集約方法や開催方式に悩むことが多いかもしれませんが、重要なのは「イベントで参加者にどういった体験をしてもらいたいのか」「参加者がどういったポイントに価値を感じるのか」をイメージし、プログラムなどに反映させることです。
ビジネスイベント運営者が知りたいのは「実施費用」と「感染対策」
ビジネスイベント実施にあたり、担当者が最も気になる情報は何でしょうか。調査の結果、「会議・イベントの実地開催に関わる費用感」が33.0%で最も高く、ビジネスイベントのコストについて関心が高いことがわかりました。
次に多かったのが「各会場における感染対策」で27.8%でした。運営者として、感染リスクの管理には細心の注意を払っていることがわかります。
これからのビジネスイベント実施傾向とあり方
2021年は新型コロナウイルス感染症の拡大により、多くの企業がビジネスイベントを延期または中止にしました。この1年で感染予防のガイドラインが設けられ、押さえるべきポイントが明確になったこともあり、昨年に比べ安全面に配慮しながらイベントを開催する企業が増えつつあります。
コロナ収束後はハイブリッド開催が主流に
ある程度、コロナ禍が収束したとしても、社外向けビジネスイベントの開催意向については、オフラインとオンラインのハイブリッド開催を検討している運営者が多いということが今回の調査でわかりました。
「これまで通りの開催は難しいと判断しているが、顧客とのタッチポイントである展示会やカンファレンスなどのイベントは行っていきたい」という企業側の想いが見てとれます。
業界別で見ると、「ハイブリッド」開催意向が高いのは「製薬系」「IT系」「金融系」「流通系」「電気系」で、「オフライン」の開催意向が比較的高いのは「住宅・不動産系」「官公庁・自治体」という結果でした。
参加者側の意向を見ると、ビジネスイベントの参加理由として「通常では得られないコミュニケーションが図れる」「普段会えない人に会うことができる」「商品やサービスを実際に体験することができる」といった回答が多く、イベントはオフライン開催を重視する傾向にあります。
企画運営業務の外部委託の流れも
イベントの内容や規模にもよりますが、オンラインイベント開催にあたって準備すべきことは多岐に渡ります。規模が大きくなれば、業務負担は当然大きくなります。こうした背景から、「イベント運営の負担を軽くしたい」「対応人財の不足をカバーしたい」という企業のニーズが高まり、最近ではビジネスイベントの企画運営業務とデジタル化をトータルで委託するケースが増えてきました。
JTBが行った調査によると、社内向けイベントは内製化の傾向にありますが、社外向けのイベントは委託したいと考える企業が一定数いることがわかりました。その中でも一部委託が8割弱という結果でした。
まとめ
今回は、JTBが行ったインターネット調査の結果から、企業が行うビジネスイベントの実態とこれからの実施意向、参加者の参加意向についてご紹介しました。ご紹介した調査結果から、コロナ禍が収束し、ビジネスイベント開催にあたって制限がない状況になった場合でも、社外向けビジネスイベントはハイブリッド開催の意向を持つ企業が多いことがわかりました。
また参加者は、セミナーやカンファレンスといった聴講型イベントはオンラインでの参加、商談会など他社との関わりがあったり、商品やサービスを実際に体験できるプログラムを含むイベントはオフラインで参加したいという意向が強いことがわかりました。
2021年12月には、東京都内での新規感染者数は急激に減り、100人を下回る日が続きましたが、新たな変異株が猛威を振るっており、感染再拡大に対して警戒が続いています。しばらくはこの繰り返しかもしれません。この機会に貴社でも、事業拡大や顧客とのコミュニケーションを止めないために、ビジネスイベントの運営方法や対応策について検討してみてはいかがでしょうか。今回の調査結果の詳細は、以下よりダウンロードいただけます。ぜひ、ご覧ください。