企業の持続的成長のためには「DX推進」が欠かせません。実際に、2020年5月時点で、82.5%の企業がDX推進に取り組んでいます。2018年、経済産業省がDX(デジタルトランスフォーメーション)レポートの中で「DXが進まなければ2025年以降、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性も高い」と指摘しています。これからの企業活動にDXは欠かせません。マーケティング活動のDX化を進めれば、顧客との新しい接点を創出でき、可能性を広げられます。本記事では、マーケティングのDX化による顧客とのコミュニケーションの変化ついて紹介していきます。
INDEX
- 「2025年の崖」を切り抜けるためのDX推進
- DXとは?
- 最適なデジタルマーケティングを行うためにはDX推進が不可欠
- 【事例紹介】マーケティングのDX化で得られる効果
- リード獲得2倍を達成した広告会社A社の事例
- 市場機会発見のスピードを向上させた大手衛生用品メーカーB社の事例
- AIの導入で営業効率の向上に取り組む大手ガス会社C社
- 顧客との新しい接点を創出できるビジネスイベントのDX化
- ビジネスイベントとは?
- ビジネスイベントのDX化とは?
- ビジネスイベントのDX化の3つのメリット
- まとめ
「2025年の崖」を切り抜けるためのDX推進
DXとは?
DXとはDigital Transformationの略で、直訳すると「デジタル変換」という意味です。一方、ビジネス用語におけるDXにはもう一歩踏み込んだ意味合いがあり、「IT技術の活用によって企業活動や人々の生活の質を向上させること」とされています。経済産業省のDX推進ガイドラインでは「データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、競争上の優位性を確立すること」と定義されています。
経済産業省が発表したDXレポートによれば、老朽化・複雑化・ブラックボックス化しているレガシーシステムによって、2025~30年の間に最大約12兆円の経済損失が出ると推定されています。この大きなリスクを「2025年の崖」と呼んでいます。DXレポートでは、企業の持続的な成長、競争力強化のためにはDX推進は避けられないと指摘しています。
- 出典:デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)Ver. 1.0
- 出典:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~(METI/経済産業省)
最適なデジタルマーケティングを行うためにはDX推進が不可欠
デジタルを活用して売れる仕組みを作るデジタルマーケティングをさらに発展させ、イノベーションを引き起こすのがDXです。ここからは、DXとデジタルマーケティングの深い関係について解説していきます。
デジタルマーケティングとは
デジタルマーケティングとは、デジタル技術やデータを活用して情報収集・分析を行い、各施策の効率化や効果の最大化を図り、売れる仕組みを作る施策のことです。
WEBサイトに注力した「WEBマーケティング」とは異なり、デジタルマーケティングの手法はオンラインで収集できるデータだけでなく、リアル店舗での消費者行動データの活用も含まれます。このように、さまざまなチャネルのデータを総合的にマーケティングに生かすことで、さらなる効果を期待できます。
またSNSなどデジタルの拡散力を活用することで、より多くのステークホルダーに企業の存在価値や商品をアピールすることができます。プロモーション効果だけでなくブランディングの効果も期待できます。
なぜ、マーケティングにデジタルの活用が必要なのか?
インターネット・スマートフォンが普及し、消費者は商品を購入する際にネット検索を活用するようになりました。ネット上で商品の性能や価格を調べ、口コミを参考にしたり、情報通の友人・知り合いや、SNSの投稿で商品を知って購入したりするケースも増えています。
また、ネット上の画像だけでは伝わらない色味や質感を確かめるために店舗で実物を確認し、ECサイトの価格と比較してから購入するケースもあります。このように消費者の購買行動は多様化しており、新聞折込の広告やCM、店頭での販促など、従来のアナログマーケティングだけでは購入につながりにくくなってきています。
従来は企業側が「売りたい」と思ったタイミングで販促活動を行っていましたが、今はユーザー自身が「欲しい」と思ったタイミングで商品・サービスを検索し、購入できる環境が整っています。さらに、フリマアプリ(2018年市場規模6,392億円)やネットオークション(2018年市場規模10,133億円)を使ったCtoC市場も拡大しており、今まで買い手だった消費者が売り手に回り、市場にも大きな変化が起きています。
単に広告をデジタル化して商品を買う見込みのない人にリーチできても、見込み顧客にリーチできなければマーケティングの意味はありません。効果的なマーケティングを行うためには、データやデジタル技術を活用してターゲティングを行い、製品やサービス、ビジネスモデルを「変革」するマーケティングのDX化が必要なのです。
出典:平成30年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤(電子商取引に関する市場調査)
今までのマーケティングは、HPやSNSで情報発信したり見込み顧客にDMを送るなど、情報の流れが一方向でした。しかしDX化すると、デジタルを駆使して顧客の反応・行動履歴・属性・嗜好を把握、顧客体験を重視した発信を行えるようになるため、営業効率が向上します。DX推進により顧客の「不便」を解決して、より快適で新たな顧客体験を生み出せれば、他社との差別化・ブランディング向上・ファンの創出につながります。
事例紹介 マーケティングのDX化で得られる効果
ここからは、事例を通じてマーケティングのDX化の効果についてご紹介します。
リード獲得2倍を達成した広告会社A社の事例
メディアのデザインに溶け込み、ユーザー体験を阻害しないネイティブ広告サービスを提供しているA社は、新型コロナウイルスによる影響でオフラインセミナーによるリード獲得の大幅な減少を危惧。オンラインによるデジタルマーケティングを取り入れました。具体的には、Web上の動画・e-bookなどを通じてユーザーと双方向のコミュニケーションが取れる「インタラクティブコンテンツ」の制作です。インタラクティブコンテンツのメリットは、ユーザーの反応に応じて、ニーズに合った最適な情報提供ができることです。自社サイトのトップページにインタラクティブコンテンツのポップアップを全画面表示させることで、約2倍近くのリード獲得に成功しています。
市場機会発見のスピードを向上させた大手衛生用品メーカーB社の事例
衛生用品メーカーB社では、消費者をよりよく理解するためにSNSやECサイトの口コミ等を収集・統合するデジタル基盤を構築。消費者インサイトの検証スピードを上げることで、商品戦略の高度化を目指しています。また、生産工場では、最先端のテクノロジーを活用し、資材搬送や設備の監視・制御システムを自働・ロボット化。単純作業や重労働「ゼロ」に成功し、製造原価の削減にもつなげています。
AIの導入で営業効率の向上に取り組む大手ガス会社C社
ガス会社C社では、予測モデルを効率的に構築できるAIツールを導入したことにより、これまで数ヵ月かかっていた予測モデルの構築を短期間でできるようになりました。例えば、設備の故障や電力の市場価格の予測など、AIを活用することで精度の高い予測を実現。また、データを活用して見込顧客を数値化し、営業効率の向上も実現しました。このように、C社ではAI活用によって膨大なデータを速やかに分析・予測し、マーケティングの最適化を図っています。
- 出典:【最新版】デジタルマーケティングの事例で学ぶ|成功する戦略のポイント
- 出典:デジタルトランスフォーメーション銘柄 (DX銘柄)2020
顧客との新しい接点を創出できるビジネスイベントのDX化
コロナ禍において、マーケティング施策の1つであるビジネスイベントをDX化する企業が増えています。今後のスタンダードになるビジネスイベントのDX化についてご紹介します。
ビジネスイベントのDX化とは?
ビジネスイベントとは、セミナーや新商品発表会、展示会、経営方針発表会、優績代理店表彰イベントなど企業が自社の事業拡大のために行うさまざまなイベントのことです。ビジネスイベントのDX化とは、今まで行っていたビジネスイベントの告知~参加者集約~運営~事後フォローのフローにデジタルツールを導入し、効果の最大化を図るものです。コロナ禍で、感染対策の必要性によりお客様と直に接する機会が大きく減少しました。お客様と企業の距離が広がったため、デジタルを活用したお客様情報の収集やお客様データに基づく購買行動の分析に注目が集まっています。
「2025年の崖」問題※は2018年には指摘されていました。しかし、DXは、これまでコストや人財不足等の問題から先送りにされてきました。結果的にコロナ禍でDXは加速、今や多くの企業がDXを進めています。コロナ禍以前に比べ、企業はよりスピーディーな対応を求められています。
「2025年の崖」とは、2018年経済産業省が、DX(デジタルトランスフォーメーション)レポートで指摘した「DXが進まなければ2025年以降、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性も高い」と警告した内容のこと。
ビジネスイベントのDX化の3つのメリット
これからはデジタルを活用した顧客接点の確立が重要です。DXで顧客との新しい接点を創出するためには、オンライン(ハイブリッド型)イベントがおすすめです。ビジネスイベントのDX化には、次のような3つのメリットがあります。
- オンライン開催によって遠方の顧客も参加可能になり、商圏が拡大する(新たな顧客獲得につながる)
- 会場の確保や各種印刷物の手配、ご案内書面の送付や当日の運営など、主催側の負担を大幅に軽減できる
- リアルイベントでは集計が必要なデータが、オンラインイベントの場合は簡単に分析でき、参加者属性と視聴データを掛け合わせて、イベント後のマーケティング活動に活用できる
オンラインイベントにはさまざまなメリットがあるとはいえ、やはり自社で開催するにはある程度ノウハウが求められます。イベント設計・集客・管理などの課題もあり、担当者にも相当な負担がかかります。
最近では、イベント準備や当日の進行を滞りなくスムーズに行うため、オンラインイベントの企画・運営のすべて、または一部を専門の会社に代行してもらったり、実施を支援するデジタルツールを導入する企業が増えつつあります。
まとめ
今回は、マーケティングのDX化についてご紹介しました。コロナ禍で企業を取り巻く環境は大きく変わりました。これからは、デジタルを活用した効果的・効率的なマーケティング活動が鍵です。デジタルを活用し顧客接点を創出、データを活用して多様化する消費者行動や顧客ニーズを捉えることが、これからの時代には不可欠です。その手段として、ビジネスイベントのDX化がおすすめです。
マーケティングやビジネスイベントのDX化がトレンドになる一方で、どんなケースでも成果が出ているわけではありません。電通の調査によると、取り組んでいる企業は8割を越える一方で、成果が出ている企業は5割にとどまり、2割程度はまだ計画を進められない状況にあります。
このような調査結果の一因にあるのが、社内のリソース不足です。企業にとって“失敗できないプロジェクト”であるDX化。貴社でも、社外のリソースをうまく使って自社に合ったDX化を進めてみてはいかがでしょうか。
出典:DXで成果が出る企業・出ない企業の違いって? | ウェブ電通報