ワーケーションの導入に伴い、補助金制度の利用を検討する企業が増えています。実際にどのような補助金制度が使えるのか、気になる人もいらっしゃるかもしれません。この記事では、補助金制度の利用を検討している人に向けて、ワーケーション補助金の事例を交えて解説しています。ワーケーション補助金制度を把握し、制度を有効活用してみてください。
ワーケーションとは
ワーケーションとは、観光地、リゾート地などの地方で休暇を楽しみつつ、仕事ができるワークスタイルのことです。「ワーク」と「バケーション」を組み合わせた造語として知られています。2020年7月に行われた観光戦略実行推進会議で、政府はワーケーションの推進を決定しています。
ワーケーション普及の目的は、新型コロナウイルスの影響で観光客が激減した観光地の経済復興と地域の活性化です。企業がワーケーションを導入すれば、テレワークの実現と社員の満足度の向上も可能です。
企業へのワーケーション補助金とは ~助成金と補助金の違い~
補助金は、助成金と同様に扱われることもありますが異なる制度です。まずは、双方の共通点や違いについて解説します。
助成金と補助金の共通している点
共通点は、国や自治体などの公的な資金が財源であることです。助成金は、民間企業が国に支払う保険料が財源になっています。一方、補助金は国や自治体の予算に組み込まれています。また、助成金や補助金は、原則として返済する必要がありません。国や自治体などの審査を経て、申請内容が認められれば給付金を受け取れます。
助成金と補助金の違う点
助成金と補助金の異なる点は、申請期間の長さや対象者、支給金額などにあります。助成金の申請はいつでも可能ですが、補助金は公募期間が決まっているケースが多いです。対象者は、助成金は個人を対象としていますが、補助金は事業者を対象としています。支給金額は、助成金が数十万円程度に対し、補助金は数百万円から数十億円までと、規模の大きさにも違いがあります。
2021年度 ワーケーション補助金が増えている要因
ワーケーション補助金を利用する企業が増えている背景として、新型コロナウイルスの影響があります。新型コロナウイルス感染拡大のための対策として、政府は企業に対してテレワークの導入を促しており、推進のために設けられた制度がワーケーション補助金です。
ワーケーション補助金は、テレワークを導入する企業にとって経費の削減にもなるお得な制度のため、制度を利用してテレワークを推進する企業が増えています。
ワーケーション補助金の種類や金額
ワーケーション補助金にはさまざまな種類があり、申請する自治体によって給付される金額は異なります。以下では、ワーケーション補助金の主な種類や、一般的に支給されている金額について解説します。なお、最新の情報については各自治体のホームページ等をご確認ください。
ワーケーション補助金の種類
ワーケーション補助金の対象経費は、自治体によって異なります。補助金の主な種類は、以下のとおりです。
- 宿泊費
- 交通費
- 視察時の旅費
- ワークプレイス利用料
- 水道光熱費
- インターネット利用料
- レンタカーの借上料
ほかにも、オフィス家具やWeb会議システムに必要な機器類の準備にかかる経費を対象とする自治体もあります。
ワーケーション補助金の金額
ワーケーション補助金は、自治体によって対象となる経費や利用回数などが異なるため、給付額にも差があります。たとえば、宿泊費を対象とする自治体でも、すべて無料のところもあれば、1泊あたりの上限額を設定しているところも少なくありません。また、交通費は、往復を対象とする自治体と片道でかかる費用に上限を設けている自治体もあります。
企業へのワーケーション補助金の例を紹介
上述したとおり、ワーケーション補助金は自治体によって、対象となる経費や金額が異なります。ここで、ワーケーション補助金を実施している自治体をいくつか紹介します。制度を利用する際の参考にしてください。
北海道釧路市のワーケーション補助金
北海道釧路市では、釧路地域企業立地推進協議会と連携し、サテライトオフィスの誘致を目的としたワーケーション補助金制度を実施しています。補助金の申請は、3泊以上の滞在が条件です。対象の経費は、宿泊費、交通費、オフィス利用料、レンタカー借上料、Wi-Fiルーター借上料、印刷製本費などが挙げられます。
釧路市は自然を身近に感じられるうえに、生活の利便性を高める施設が充実しています。
青森県三戸町のワーケーション補助金
青森県三戸町では、サテライトオフィスの設置を検討している企業や、テレワークの体験希望者を対象としたワーケーション補助金制度を設けています。町内にある3LDKの木造平屋住宅を改修し、お試しサテライトオフィスとして利用しています。
利用期間は3カ月以内で、利用期間中の室料と水道光熱費はすべて無料です。三戸町がある三戸駅は、東京駅から片道3時間ほど。自然豊かな環境でテレワークを行えます。
新潟県新潟市のワーケーション補助金
新潟県新潟市では、移住促進特別支援金交付事業の一環として、関東圏から新潟市への移住や定住を促進する目的で、体験居住者へのワーケーション補助金を交付しています。体験居住の対象者は、主に東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の在住者で、新潟市への移住や定住を検討している人です。
体験居住の条件は、新潟市で1カ月以上在宅勤務を行うこととされています。支給額は1世帯あたり10万円のため、家族と一緒に新潟市での生活を体験しながらテレワークを行えます。
長野県のワーケーション補助金
長野県では、県を挙げてワーケーションを推進しており、「信州リゾートテレワーク実践支援金」制度を実施しています。信州でリゾートテレワークを実践する企業を対象に、宿泊費の一部が支援されています。
支援の対象は1人1回で、連泊数の上限は最大7泊までです。支援金額は1~2泊目までは1人2,000円で、3~7泊目までは1人3,000円となっています。長野冬季オリンピックの会場になった白馬村や高原エリアなどでワーケーションを行えます。
静岡県清水町のワーケーション補助金
静岡県清水町では、テレワーク推進事業の一環として、助成金の交付を行っています。対象地域は清水町内外を問わず、どこの自治体に在住する人でも町内の宿泊施設の客室を利用できます。客室を利用できる時間は10時~19時までとなっており、助成金額は1日1回の利用で3,000円までです。
給付方法は、対象施設の利用料金の支払金額から3,000円が割引される仕組みです。制度を利用する際は、「清水町リモートワーク推進事業対象プラン」の予約が必要になります。
福岡県北九州市のワーケーション補助金
福岡県北九州市では、地方の自治体にサテライトオフィスの設置を検討している、九州市外に拠点を置く企業を対象にした「おためしサテライトオフィス誘致促進事業」を実施しています。対象の経費は、宿泊費が1人最大30日、6,000円までで、交通費は1人片道3万円、ワークスペース利用料は1人最大30日で1日1,500円までです。
また、専属のコーディネーターに相談すれば、市内の企業や学校、学生を紹介してもらえるため、新たなビジネスや人材採用のチャンスも得られます。
ワーケーション補助金の申請方法や手順
ここでは、ワーケーション補助金の申請方法や具体的な手順について解説します。
ワーケーション補助金の申請方法
自治体ごとにワーケーション補助金の申請方法は異なります。たとえば、利用開始前に申請書や実績報告書の提出を求められるケースと、施設の使用申請書や身分証の写しなどの提出が必要なケースがあります。ワーケーション補助金を申請する際は、各自治体の申請方法の事前確認が必要です。
ワーケーション補助金の手順
ワーケーション補助金の申請後の流れは、自治体によって異なります。たとえば、サテライトオフィスのお試し体験を実施する自治体では、申請後にZoomなどのオンライン会議システムを利用して打ち合わせを行ってから、体験が開始されます。実績報告書の提出が必要な場合は、ワーケーション実施後から実績報告書を提出するまで補助金の請求が行えません。
ワーケーション補助金を利用する際の注意点
ワーケーション補助金の利用には、注意すべきことがあります。解説する注意点を参考にしてください。
01補助金の詳細を調べる
上述のとおり、補助金の条件や申込方法などは、自治体ごとに異なります。そのため、補助金を利用する際は、あらかじめ対象の自治体へ詳細を確認しておくことが大切です。自治体によっては、補助金や支援金、助成金などの記載はあっても、制度の内容が曖昧な場合もあるため、どのような仕組みで補助金や助成金を受け取れるのか確認しておく必要があります。
02受給資格や金額を確認する
補助金を受け取るためには、各自治体が設けている受給資格の条件を満たす必要があります。そのため、どのような条件があるのか、事前に確認しておくことをおすすめします。また、ワーケーションに必要な資金を補助金で賄えるかどうかの確認も重要です。補助金を受け取れたとしても、実際の生活に必要な資金が不足すれば、ワーケーションのメリットを得られません。
03現在も実施しているか確認する
ワーケーション補助金は、新型コロナウイルスによる感染拡大を防止するために、実施を中止している自治体もあります。各自治体のホームページや電話、メールなどによる問い合わせを利用して、最新の情報を入手しておくことが大切です。また、実施している場合でも、先着順や募集期間が設けられていることもあるため、あわせて確認しておくことをおすすめします。
まとめ
今回は、ワーケーションの導入に伴い、補助金制度の利用を検討している担当者に向けて、ワーケーション補助金について、自治体の例をいくつか交えてご紹介しました。ワーケーション補助金を利用すれば、企業はテレワークを推進できるうえに、必要な経費の削減も可能です。ワーケーションが注目される今、多くの自治体がワーケーション誘致に積極的です。ぜひこの機会に、自社に合ったワーケーション補助金制度を見つけ、うまく活用することで、貴社のワーケーション推進を図ってみてはいかがでしょうか。