株式会社JTBでは、「ニューノーマル時代にどのようなエンゲージメントの捉え方があるのか」「どのようにエンゲージメントレベルを上げていくことができるのか」をテーマに、2021年4月6日に「JTBエンゲージメントLounge」をオンラインで開催しました。
新型コロナウイルス感染拡大により、各企業では業績悪化や、テレワークの普及によりコミュニケーションが減少するなど、社員のモチベーション維持や社内エンゲージメントの管理に問題を抱えているケースもあります。こうした課題を解決するため、エンゲージメントを高めるコミュニケーションについてどう考えればよいのか、伊藤 羊一氏が登壇したイベントのレポートを通じて、ヒントをお届けします。
開催概要
JTB エンゲージメント Lounge ~ニューノーマルにおいてリーダーが知っておくべき、「エンゲージメントを高めるコミュニケーション」のヒントとは?~
- 開催日
- 2021年4月6日(火) 16:00~17:30
- 開催方式
- オンライン開催
プログラム
第1部 基調講演「ニューノーマル時代のエンゲージメント」
第2部 「最新エンゲージメント 事例&ソリューション映像」
第3部 対談「未来に向けてのエンゲージメント」
講演者
Zホールディングス株式会社 Zアカデミア学長/ヤフー株式会社 コーポレートエバンジェリストYahoo!アカデミア学長/武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 学部長/株式会社ウェイウェイ代表取締役/グロービス経営大学院 客員教授
日本興業銀行、プラスを経て 2015 年ヤフー。現在 Zアカデミア学長として Zホールディングス全体の次世代リーダー開発を行う。またウェイウェイ代表、グロービス経営大学院客員教授としてリーダー開発を行う。2021年4月武蔵野大学アントレプレナーシップ学部を開設、学部長就任。代表著作「1分で話せ」。
コロナ禍でコミュニケーションとエンゲージメントはどう変化した?
第1部では、Zアカデミア 学長の伊藤 羊一氏をお迎えし、「ニューノーマル時代のエンゲージメント」と題して、チームを盛り上げていくための具体的なヒントをお話いただきました。
コロナ禍で変化する企業の生産性
この1年、新型コロナウイルスの感染拡大は、これまでの生活様式や働き方に大きな変化を与えました。特に働き方においては、テレワークが当たり前の状況になりました。しかし、世間ではテレワークに懐疑的な意見や見方をする方が多いのも事実です。マイナビニュースが行った調査では、企業の経営陣の半数が、「テレワークにメリットを感じない」と回答しました。
パーソル総合研究所が「テレワークの生産性」について実施した調査では、出勤時の仕事の生産性を100%としたとき、生産性が上がったと感じた人は35.2%、下がったと感じた人は64.7%。全体平均では84.1%と、「テレワークは生産性が低くなる」という認識が多いことがわかりました。
出典:第四回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査 - パーソル総合研究所
企業によってギャップはあるものの、なぜ、「テレワークは生産性が下がる」と思われているのでしょうか。まずは、自社におけるテレワークの課題を把握しないといけません。テレワークの一番のハードルは、「コミュニケーション」だと言われています。つまり、企業・チームのエンゲージメントを高めるためには、まずコミュニケーションを高める必要があるのです。
マネージャーがチームを盛り上げるためにやるべき3つのアクション
では、どうしたらチームのエンゲージメントを高められるのか? オンラインのコミュニケーションでは何が問題なのか? を見ていきましょう。
コミュニケーションには大きく3つあります。「全体のコミュニケーション」「雑談的コミュニケーション」「個別のコミュニケーション」です。
企画会議や打ち合わせなどの「全体のコミュニケーション」は、オンラインでまったく問題ないと言えます。次に「雑談的コミュニケーション」ですが、オンラインではやりにくいという声をよく聞きます。これはランチ会やお茶会を開催するなどして、雑談する場を設ければよいでしょう。
一方で、オンラインにおいて決定的に足りていないのが「個別のコミュニケーション」で、代表的なものが、1on1ミーティングと呼ばれるものです。1on1とは、マネージャーとチームメンバーが1対1で対話することです。この“1対1の対話”を意識して、しっかりコミュニケーションしていけば、オンラインでもコミュニケーション不足をカバーできるはずです。
オンラインのコミュニケーションを円滑にしていくためのチームマネジメントとはどういうものかをお伝えします。マネジメントの役割において「管理」という仕事はほんの一部であり、「チームをゴールに導くためになんとかする」というのがマネジメントの本来の仕事です。チームをゴールに導くために、マネージャーが実践すべきことは以下の3つです。
マネージャーの役割
01ゴールをチームに共有する=組織・チームが目指すべきゴール
02プロセスを明確にして導く=進捗や課題を把握する
03チームの力を最大化する=ゴールを到達させる
・安心・安全な職場にする・・・心理的安全性=来たくなる職場、言いたいことが言える職場
・個人のパフォーマンスを最大化する・・・個人の能力・スキルを発揮させる
③の「チームの力を最大化する」を実現させるため、マネージャーは働きやすい環境を整え、個人の才能と情熱を解き放つ状態にしてあげることが重要です。この①~③のステップを「1:N」、「1:1×N」で行いましょう。1:Nとは複数への発信で、1:1×Nとは1対1のコミュニケーションをチームメンバーN人分実施することです。
エンゲージメントを高めるポイントは1対1の対話
チームのエンゲージメント向上に取り組む際、マネージャーはチーム全体を対象にしがちですが、実は個人との対話、つまり1on1ミーティングがとても大事です。チームに言えなかった個人の悩みや、フォローしないといけないことが、1対1で対話することで見えてきます。
メンバー視点でお話をすると、目指すべき成果を優先して、自分のことは後回しにしがちです。日々の業務の中で、モヤモヤや疑問を持ったまま仕事をしていたとしてもオンラインではそれが見えづらく、マネージャーが把握していないケースも少なくありません。だからこそ、テレワークでは1on1ミーティングで、相手の悩みや想いを聞くことが重要です。まず1対1で話して、考えて、気づいて、実践して習慣にすることで、チームメンバーは仕事に対するモヤモヤや疑問を解決し、モチベーション向上へとつなげることができます。
1on1は相手のための時間であることを忘れてはいけません。説教やダメ出しをすると社員は1on1に対して苦手意識を持ってしまい、モチベーションが下がってしまいます。1on1は、メンバーの悩みを聞いて、成長を促す場であると同時に、メンバーのキャリアプランをサポートする場でもあります。相手の昇進や転職について話してもいいんです。また、自分の意図が相手に伝わっているかを確認してもよいでしょう。このようにオンラインで定期的に1on1ミーティングを行うと、リモートワークでもモチベーションを高めることができるのです。
今回の新型コロナウイルスによるパンデミックは、来るべき未来が少し早くワープしてきただけだと個人的には思います。遅かれ早かれ、テレワークを取り入れた働き方はやってきていたはずです。今後は、リアルとオンラインのよいところを取る(=ハイブリッド)ことが常識になってくるでしょう。
企業のマネージャーには「1:N」、そして「1:1×N」を実践し、オンラインコミュニケーションを活性化していっていただきたいですね。その対話を通じて、社員のモチベーション、そしてチームのエンゲージメントを高めてニューノーマル時代に対応していってほしいと思います。
エンゲージメント最新事例の紹介
第2部では、社内外のエンゲージメント向上を目的としたJTBのソリューション事例を紹介しました。ここでは組織エンゲージメント向上に取り組んだ事例をピックアップします。
HRテック WILL CANVAS 導入事例
レジャー系企業A社様 新社長就任後、周年事業の施策効果測定としてWILL CANVASを導入
- 企業の想定していた課題
- トップが交代。新社長は経営層と従業員の間に距離があると感じていた。距離を縮めることで、従業員がさらに主体的に業務に取り組めるのではないか?
- WILL CANVASによるアンケート調査を実施
- 企業風土項目が一般平均値よりも低く、その中で、特に会社への「エンゲージメント」を表す数値が低いことがわかった→エンゲージメント課題が可視化された
- 施策の効果
- 2回目のアンケートを実施すると、全体的に一般的数値を越え、特にエンゲージメントスコアは劇的にアップ。従業員の意識に変化が生まれたことがわかった
サービス・ソリューションのご紹介
ケースから紐解くこれからのエンゲージメントスタイル
第3部では、「未来に向けてのエンゲージメント」と題して、伊藤氏とJTB取締役常務執行役員ビジネスソリューション事業本部長・大塚雅樹の対談が行われました。特に印象的だったポイントをご紹介します。
- 伊藤氏
- 第2部のエンゲージメント最新事例を拝見して思ったのは、エンゲージメント向上に限らず、新しいことを始めるのに外せないポイントは、「コミュニケーション」ですよね。だから、こういう取り組みはすばらしいなと感じました。事例でありましたが、周年イベントは、参加している社員一人ひとりが考える場として非常に意義があることだなと思いましたね。
- 大塚
- ありがとうございます。今、社員そしてお客様に関わっていく中でどうしたらエンゲージメントを高められるか、JTBでは知恵を出し合っています。称賛される、自己実現できる環境を企業が与えることは、ニューノーマル時代に求められているように思います。ご紹介した事例の企業様は、周年イベント当日はもちろん、プランニングしている時間、イベント後にアーカイブで見る時間などもエンゲージメントを高められる時間として大事だなと感じます。また、普段の業務では見られない上司や部下の姿も貴重ですよね。
- 伊藤氏
- そうですね。仕事じゃないフラットな場だからこそ、新たなコミュニケーションが生まれ、エンゲージメントが高まるわけですね。
- 大塚
- イベントが主目的ではなく、「イベントを通じて何を叶えたいのか?」をみんなで考えることが大切ですね。そういう自分たちの居場所を認識したり、目標を共有し合ったりする場はオンラインでも創れるようになりました。リアルかオンラインかという問題は、叶えたいゴールによってさまざまなで、ときにはハイブリッド開催がベストな場合もあれば、オンラインが最適なこともあります。リアル、オンライン両方のよさを活用していくことが、これからの時代に求められるエンゲージメントスタイルなのだと思います。
まとめ
テレワークが一般的になりつつあるWithコロナ時代では、企業として成果を出すため社員のコミュニケーション、エンゲージメントの向上はさらに重要になってきます。組織やチームのコミュニケーション課題をクリアするため、全体のコミュニケーション、雑談的コミュニケーションも行いつつ、1on1ミーティングを行うことをおすすめすします。マネージャーはゴールをチームに共有したうえで、「1:N」「1:1×N」のコミュニケーションを実践してエンゲージメント向上に取り組むことが重要です。皆さまの会社でもエンゲージメントについて再考し、実践してみてはいかがでしょうか。
ホワイトペーパー(お役立ち資料)エンゲージメント向上への取組み ~事例を動画で紹介!~
ニューノーマル時代、多くの企業において、社内外のコミュニケーションの形は確実に変化しています。そのような中で企業を取り巻く関係者とのエンゲージメント強化のために、新しい取り組みを実施した5つの事例を動画と資料でご紹介します。ぜひ、ご覧いただき、貴社の取組みのヒントになさってください。
- 事例01:会社と社員のエンゲージメント
- 事例02:組織エンゲージメント
- 事例03:アニバーサリーエンゲージメント
- 事例04:主催者と参加者のエンゲージメント
- 事例05:社会と会社のエンゲージメント
2021年4月7日配信WEBセミナー「JTB エンゲージメント Lounge 」にてご紹介した事例となります。